Like Clay in Their Hands
オーバーサイズの綿のタイプライターの
シャツの第二釦までを開けて
くたびれたタンクトップに
硬く隆起する鎖骨が垣間見え
綺麗めツイルのカーブパンツの裾の片方が
折れ上がったままMERRELLのスニーカーに引っかかり
カバーの破れた文庫本に夢中な眼鏡の少し上で
時々眉間に皺を寄せているのは
度が合っていないことに無頓着なのか面倒なのか
舐めまわす視線が在ることなど気にもかけずに
オフホワイトからサンドベージュへのグラデーションを纏う人の
世界に夢中な佇まいを描きながら見守っていたい
ずれた眼鏡を戻す為にカフスから覗く手首の
強そうな筋たちをもっと強く浮かび上がらせるとき
オレンジがかった暗がりに湿った音を這わせて咲き
痺れるまで抱いて眠る赤んぼうが黄昏に泣き
残像を構築してしまうのをやめられない先
今日もまた逝ってしまうのだと
打ち明ければ背中をさする厚い手のひら
人波で不意に繋がれた手から手へと中指を伸ばし
他の誰にも知られないように手首の内側をまるく撫でる
リラックス時のミックスボイスが雑踏を崩して
臓器を震わせてくるからどうしようもない
はにかんで踊る手の甲に血液の道が浮上する
他の誰もが最も華やかな踊り子に心を溶かしていたが
手首ごと奪う手のひらについては他の誰にも奪えない
コメント
ピカソが言った言葉の、うちに、〈手が描けなくてはだめだ〉、と言うのがありましたね、もちろん絵画は、画布の上にそのような手、を描くわけですが、ピカソの言葉は多分に、意志的である手をしめしているようです、この詩で語られる手は、もっと体温的であるわけですが、それは意志と体内感覚の、まじりあったものでもあるようです、そして言葉としての〈肉体的〉、それはつまり作者の感覚と言葉との、せめぎあい、つれそい、みつめあう、不思議な関係、を感じさせるのです。
言葉の洪水のよう。この詩もすごい。
カッコいいやないかー!!
爆裂好みです、カッケーよー。
とき、咲き、泣き、先のところの感じも大好きだわ。
@坂本達雄
さん。ありがとうございます。ピカソは若い時の作風が好きです。その頃は既に手について考えていたのでしょうか。
自分の詩のことになりますが「不思議」と思ってくださる方が多いのは自覚しています。多種類の次元や時間軸をレイヤーで書いているつもりだからかな。何を書いているか本人がわからなくなってきましたが、坂本さんのことも幅広く芸術家だと思っております。
@たけだたもつ
さん。ありがとうございます。洪水の例えは嬉しいです。
@那津na2
さん。ありがとうございます。
やったぁー!いえーい。
@あぶくも
さん。爆裂ありがとうございます。
そこだけ遠慮がちに踏んでみたのでした。転調の意を含めて。
普段から詩の様な口調で話すのに憧れていて時期もありました。
この詩の主人公や手などの描写が、緻密かつ繊細、具体性に満ちていて、読んでいる私に迫ってきました。その詩の迫力に乾杯です♪☆^^
@こしごえ
さん。ありがとうございます。
迫力ありましたか?えへへ、嬉しいです。