どこかのここ

これは墓まで持って行く。
そういうひみつがひとつくらいあるのではなかろうか
わたしにはそれがある。
これは墓まで持って行く、と
目をつむり見つめる

ひみつを見つめたあとに
見あげた空はのっぺりと青く
雲ひとつないおもい出の あのひと

墓がひっそりと待っている
ひみつは
今を大切におもう
光るそよ風にふかれている
人知れずに

ただ ただ 生きるの 死ぬまで生きて生きるの
そう言ったあのひとはうつむいてほほえみ
空色した毛糸の手ぶくろをそっととってわたしと
握手を交わして。
別別に去った
あのひととわたしは
どこへ行くのか
ひみつの孤独な宇宙の
どこかのここと どこかのここで
青い星の沈黙する
涙を零している

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コメント

  1. 感想などのコメントを歓迎します。

  2. 秘密や禁忌を持っていると心の水位が上がります。多くなると海面上昇です。生は息苦しくなり。吐き出さずにはいられない。から詩を書くのはいいのだと思います。

  3. りゅうさんへ そうなのかもしれませんね。
    秘密などは黙って言わないことだからいいのかもしれませんが。
    まあ、詩人の業というか性(さが)というか、書かずにはいられないから書くのかも? まあ、詩とは私にとっては死を含んでいる生だ、というのは今まで何回も言ってきたことですけど。うーん、さて。
    詩を書ける環境があって、こうして発表できる場(ぽえ会の主宰者さんやスタッフさんの方々へ多謝です)があることにも感謝ですね。そして、読者さんへ感謝感謝です。

    りゅうさんがこの詩を読んで思ったりしたことを、こうして私に言ってくれて ありがたいです。ありがとうございます。

  4. ひみつを持つ、というのは幸せなことだとも思うのです。たとえそれが苦しく、ひきさかれるような思いがあるとしても。
    ひみつには誰かがいなければ成り立ちません。そして守りたいものがなければひみつにすることもない。
    自分以外の人との強いつながり(離れてしまったとしても)と、守りたいと思うこと、その二つがひみつには必要です。

    それぞれがこの世界から去った後ひみつはどこに行くんですかねぇ。

  5. 王殺しさんへ そうですねぇ、ひみつ、について思ってくれて、ありがとうございます。
    はい、そうですね。王殺しさんの言ってくれている通りですね。大切だからこそ、ひみつにするのでしょうね。

    それぞれがこの世界から去った後のひみつのことは、その頃の、どこかのここ、が教えてくれなければ分からないままでしょうね。うーん。もしくは、ひみつも宇宙の魂と融合するのか。さて、どうでしょうね。ふふ。

  6. 哀しくも美しい物語と思い、僕のあ大切な秘密に照らし合わせて、読みました。

  7. 哀しくも美しい物語と思い、僕のある大切な秘密に照らし合わせて、読みました。

  8. 剛さんへ はい。ああ、そうなのですねぇ、哀しい。でも美しいとも言ってくれて、ありがたくうれしいです。その上に、剛さんの大切な秘密と照らし合わせて読んでくれて貴重に思います。ありがとうございます。

  9. 語ってしまうと、その思いが散り散りになって消えてしまうかもしれない。その思いが大切なものだからこそ、語らずに、心の中にしまいこんで、秘密にしておく。秘密って否定的なものもあるけれど、そういう肯定的な秘密もあるのだと思う。そんな気がしました。

  10. たかぼさんへ たかぼさんの秘密に対する思いを、もっと言えば、この詩に対する思いをありがたく思います。
    そうですねえ、その通りなのでしょうね。はい、秘密というものの性質として、秘密は否定的な面もありますね。しかし、たかぼさんのおっしゃる通り、肯定的な秘密もある。そのように言ってくれて、私にそのことを気付かせてくれて、貴重に思います。ありがとうございます。

  11. 私にも、秘密があります。たぶん、お墓まで持っていくであろう秘密。誰にもありますよね、そういう秘密が。…だから、人は哀しいし、いとおしいのだと思います。

  12. 長谷川さんへ はい、そうでしょうね。誰にでも秘密があると思います。そのことで、人は哀しいし、いとおしいのだと長谷川さんが思ってくれて、貴重に思います。それらのことを私に伝えてくれて、ありがとうございます。

  13. 言葉から言葉へのわたる道が美しくて気付くと最後まで流れ着いています。
    〉青い星の沈黙する
    〉涙を零している
    すごく素敵ですね!

  14. たちばなさんへ ああ、この詩を読んでくれた方々は、大体は「悲しい」というご感想をくれます。そのなかで、たちばなさんは、そういうふうに「言葉から言葉へのわたる道が美しくて」と言ってくれる。そして、「青い星の沈黙する/涙を零している」というのを「すごく素敵ですね!」とまで言ってくれます。ああ、たちばなさんのおかげで、この詩は、もっと言えば作者である私は幸いです。
    たちばなさん、ありがとうございます。

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