盂蘭盆

紫陽花はもう 草臥れて
老人が正直に手際良く 
千切れて 半醒半睡 

叔母に女性を寝かしつけと頼まれた
台所にだけ灯りがある
隣の襖の隙間へ灯りが溢れる
半裸の若い女 標本みたいな女
息を潜み 泣くなよ
抜き足差し足忍び足
腹を摩り 寝息を確認する
子供の頃からの癖に納得し腰を下ろして
鼻を摘む
うん 苦しいらしい
どうもない 赤ん坊の様

青白い愛はあるのだろうか
首元まで布団を掛ける

酒を途中に小便
終電もない時刻にぼーっと
無限を信頼する
神戸へ電話して 時計の針が反らした
ブレーキ音も無しに肥大化した
ボンネットバスが家宅へ到着し
運転手の男は勝手に家へ上がるので
静かにしてくれと小声で頼んだ

蛇口を捻りゃ水は見つかる
寡黙な男で助かった

「遅くなってごめんね」
 と叔母が帰ってきた

「已己巳己」
「白米と御御御付け 漬物が食べたい」

帰り際に女性の頬を
撫でると口角が上がった
今度は爪を切ってやろうか

悲劇を塩漬けにして
雷雨に泣く俺を笑う悪戯っ子
やっぱり あんた
髪の毛を染めろってさ
その前に眼鏡をくれ
SOS SOA SOB

俺は何処へ帰る

塩分過多
雑音があふれてこぼれて
鬱病に絡まれて 昼夜が舐めてくる
肝斑だらけになった

垂れ目の女
あんまり怒らず たまには
たまには許してくれ

投稿者

埼玉県

コメント

  1. 私小説のような、詩のような、吐露のような、「悲劇を塩漬け」が個人的に好きです。

  2. これまでの作品より焦点が定まっている感じ、「私小説のような」ってのも頷ける。赤ん坊ってのは本当に不思議な生き物です。「已己巳己」とか「御御御付け」とか、言葉が先鋭化するのが楽しい。

  3. timoleon様
    コメント大変ありがとうございます

    投稿した日付は母親の祥月命日でして
    盆に夢見た話です

    後半は母親との思い出と詩を混ぜて
    綴らせて頂きました
    ありがとうございました

  4. トノモトショウ様
    コメント大変ありがとうございます

    盆に夢みた話に詩を混ぜて綴らせていただきました
    私小説がわからなくごめんなさい
    夢って不思議で、己の内面が出されたりしますし
    盆や願望が関係されているかもしれません

    已己巳己や
    御御御付けは先鋭化なのですかね?
    僕はそう育ったのでちょっとわからないです

    お言葉ありがとうございました

  5. 見えそうで見えない(読めそうで読めない)趣がある運び、謎めいてかっこいいなと思いました。

  6. たちばなまこと様
    お返事ありがとうございます

    ただの夢に詩を連ねたアホの
    戯言です

    俺みたいな奴にコメントして頂きありがとうございました

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