塗り絵

塗り絵のコツは まず ふちを濃くなぞる
次に ふちどった一色の 形の 中を 均質に塗る
薄く塗られた塗り絵は あわくて 整ってみえる
そんな 姉の塗り絵が 大人っぽく見えた

世界のふちをなぞる
中は まだ白い
ほんとうは 白すらなくて 無
ふちを作ると 下地として白紙がはられる
白があれば そこは絵に含まれる
塗られていない でも世界の いち部分

物事のふちをなぞる
それまで無だった 何かを囲む
白紙になって ようやく 知らない ものになる
色をつけると 知っている ものになる
白地に白を塗るときも 知らないものが 知っているものになる
白地と 白を 見分ける目があれば ふたつは違うものになる

果てしなく広い世界の ぜんぶを
せめて 白紙としてでも 絵にしたい
時間が足りないから 諦めるしかない
絵にできていない 何ものかを そのままに
また あたらしく 塗り絵が作られる

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