演劇「ただしい怒り」感想詩

演劇「ただしい怒り」感想詩

昨日は京都に演劇を見に行った。演者は七遊さん(=阿僧祇:演出)と夏井菜月さん(脚本)の二人の女性。天気が良かったので早めに行ってあたりを散歩することにする。大阪も京都もあちこちでスイセンが咲き、ジンチョウゲの香りが漂い気持ちがいいものの、ちょっと暑すぎて汗ばむ陽気だった。

かなり早めに到着し場所を確認したあと、あたりをうろつく。すぐそばに同志社大学があり、相国寺という大きなお寺があったのでそこで時間をつぶす。境内には美術館もあったのだが、さすがに美術館鑑賞をする時間はなかったのであきらめる。寺の建物に感心しつつ、うらやましくなったのは大きな松の木がたくさんあることだった。何メートルあるのだろう? 私の住む地域ではあまり見ることのできない大きな木がたくさんあった。境内の道を普段通っているであろう若者カップルもいて微笑む。

6時開場だったので、5時半に演劇場に行き店に入るが誰もおらず。「こんにちはー」と何度か声をかけるものの誰も出てこず。二階に行く階段を覗くと上で会議をしている声が聞こえるので、椅子に座って誰かが下りてくるのを待つ。その間に、電車内で読んでいた本『たんぽぽ娘』を読んでいると、さっき見た景色のことを言い表したような台詞にであう。
▼「荒寥の地より」R・F・ヤング/伊藤典夫訳『たんぽぽ娘』河出文庫2015 p.127
「人間の問題というのは、彼らがまったくの見当違いの場所で奇跡をさがし求めているせいではないでしょうかね。奇跡が目と鼻の先で起こっているのに、それには気づこうともしないのです」

椅子に座って本を読んでいると男性が一人降りてきた。この店はカフェでもあるので、開演前にビールを飲めないかと尋ねると、今日はお店はやってないということで飲めず、残念。

開場して二階にあがる。床板貼りの10畳くらいの部屋で、床や窓にコピー用紙(原稿?)が散らばったり貼られている。部屋の真ん中に七遊さんが椅子に座り、床に座った夏井さんが七遊さんの膝にもたれかかるようにして小声で話しをしている(演劇内容とは無関係)。10人ちょっとが座れる席は二列あり、私は観覧者一番乗りだったので前列真ん中に座れたのだが、そこだとあまりに近すぎて二列目の真ん中に座ってしまった。ド真ん中の座席に座ることには躊躇しない性格だが、演劇を見に行くと席のあまりの近さにひるむことがある。自分もバンドをやってたのに、やる側と見る側では違うということだろう。

座席はほぼ満員になったものの、私の真ん前の席は空いたままになったのも面白かった。こういう偶然があると、自分が「前に来るな!」という威嚇をしてるのかと思うが、座ってしばらくは読書の続きをしていたのでそんなことはないだろう。でもそのおかげで二人の様子はしっかりと見れた。開幕するまで二人は小声でいろいろと話しをしていて、その中で、貝好きだと言う夏井さんが「全ての貝類を食べつくす」のようなことを言ったのが聞こえて笑いそうになる。おもしろい文句だ。二人の様子をながめながら、ふたりとも裸足であることに気づき、その足を見てしまう自分を面白く思った。家族や恋人以外の裸足の足・指を見ることってそうそうないよなあと、何となく思った。

演劇についての感想。
二人は開演前からの位置に座ったまま演技がはじまる。二人の女性がなぜなに問答を交互に話すやり方ではじまったのだが、すぐにこれは一人の女性の頭の中でやり取りする内容であることが分かる。私もよく詩でやる手法で、私は男女で問答や応答する形をとることが多い。このやり取りを書く時は台詞の最後を“ 」”でくくらずに書く。

演劇前にやっていたツイキャスを聴いていて、二人の声(声質?)が似ていると感じたのだが、演劇ではさらに二人の発声方法やイントネーション、強弱の付け方も似ていると感じた。一人の女性の頭の中の会話であることを考えると、これは意図して似せたのか、それとも同じ演劇畑出身であり、練習をしていくうちに似たのかが気になった。意識的に真似たものなのか、無意識に似たのか。どちらが良い悪いではない。

演劇内容は、母にあまり愛情をかけてもらえず育った女性が、自分は理想の母親になりたいと願い、ラブラブな彼氏も作れたものの、後にその彼氏はDV男であることが分かり振られる(ひどい彼氏だ)。自分が幸せになれないのはなぜなのか、それは母や彼氏のせいなのかと問答が進み、さらにそれは自分が選択したことではないのかという自虐、さらに自分は何かに救われたいのか(でも神の存在は否定している)と問答が進んでいく。やり取り的にはエヴァの「世界の中心でアイを叫んだけもの」のシンジ対他キャラのやり取りと似ているが、演劇では「僕はここにいてもいいんだ!」(エヴァより)という展開にはならず、作品の流れとしては、最初の問答から母・彼氏の出来事を経たところあたりでターンして、再び最初の問答に戻っていく形をとっていた。なので同じ台詞のやり取りが何度かあるものの、明確な答えや何らかの救いは描いていない。回し車の中で回る感じだろうか。

私は公演を一回見ただけだが、別の回では七遊さんと夏井さんの役を入れ替えて演技をしたそうだ。問答形式の台詞は似た台詞を矢継ぎ早にすることもあったので、演者は混乱しないのやろか? と演劇経験のない自分は驚いた。歯医者は定期的に通いましょう。

写真モデル:七遊@oz7uu・夏井菜月@hn8__
撮影者:キートン福永@keaton_fukunaga

投稿者

大阪府

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