雨のこと
雨は犬だ
土砂降りの日に玄関で雨宿りをしていた
雨はなんてことはない普通の犬で
雑種でうす茶色の毛の混ざった
すこしくたびれた顔をした犬だ
家の中よりも外のほうが好きで
雨の日には窓からずっと外を眺めて
たまに僕の方をみては首をかしげ
あの、外行きたいんですけど?
みたいな顔をする愛らしい犬だ
雨はグルメだ
ドッグフードも飽きたのか
最近ではレンジで温めないと食べないし
たまには違う味がいいと戸棚を掻く
きっと僕より良いものをたべてる犬だ
ある朝雨が鳴くので
今日も散歩かと玄関を開けると
外には大きな虹が掛かっていた
いや語弊がある
玄関から虹がのびていた
虹を駆け上がる雨を追いかけたけど
どうやら僕は虹を登れず
雨を見上げながら下を走っていく
走って走ってとうとう見えなくなって
気がつくと虹が見えなくなってしまった
立ち尽くし雨を呼ぶ
雨を呼ぶけど
何度も呼ぶけど
雨はいないけど
僕は家に歩き出す
雨がいなくなった家に
日常が降る
日常が降りしきるので
閉じられた部屋の中で
溺れて日常の魚になる
雨の夢を見た
雨がいるのに日常が溢れて
僕はたくさん泣いていた
魚は雨のことを考えていた
そうして目が覚めた
今日は空いっぱいの雨雲と
見渡す限りの雨粒で
世界中が灰色になって
ビニール傘がバタバタと音を立てて
走り回って、走り回って
それで、それで
雨上がりに虹が出た
普通の虹でどこかに端を伸ばしている
僕は雨を呼んでいる
呼ぶとワンと鳴く普通の犬だ
少しくたびれた顔をしている
雨を探している。
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