たぶん東
すっぴんの女は足先を西に向けている
こわれた鏡の上に立っているけれど
その腰は妖艶な美学の本能で薬師である
タチバナの香りでこの坂道にチョウゲンボウの歌う甲子の年
一本松原のしゃちほこの伸ばした舌で
どちらさまもおだいしさまのあやかりたいあやかりたい
ビーナスのもちつく姿にあれやあれやと
レモン水の宙返りするあまのじゃくのみなみへとむかう
水平器のこもりくのわきがのしゃらりとかわしている
雄大なコンピューターの景色としてもかすむのである
女の舌はステンレスの壁に
お互いに心酔するジャグジーのゆられて、ゆーられーて
こし取られて行くエキスの泡立つモナコの北
あいまいにあかされて、磯辺の陶酔感のしたたる
ヘルダーリンは麻薬のカリカチュアとしてミモザ的にくゆる
等身大のヘチマの実がすかすかであるこのわたし
すやすやと眠るカサンドラの色目使いの
香辛料のベッドに深みを増すばかりの犬の気配で
うるわしい冠婚葬祭の儀式に栃の実が降る
邪眼の鷲のようやくこときれる次第となれば
パパラッチにおわれてパパはしだいに驚きの口で
更生するこのヒヨコたちの耳に呪詛する者は見よ
たぶん東
そしてそのさきで、船に着替えて。
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