拝啓、中島みゆき様 vol.7 夜会Vol.7.9.17 2/2
何度も再演され、映画、小説などにもなった作品
テーマは、殺人
主人公・梨花は出版社でイラストレーターや画家などの編集担当として働いている
vol.7ではイラストレーター、vol.9は映像化されてないので不明
vol.17では日本画家を担当している
ここでは17のストーリーを元に話をしていこうと思う
梨花はいつも何かに怯えながら生きていた
自分でもそれが何かはわからない
しかし、いつも幸せをつかみかけると、暗闇から何者かがやってきて
幸せになんかさせやしないと、思ってもみない行動を起こさせては
ぶち壊されてしまっていた
もうそんな思いはすまいと思いながらも、やっぱりどこかで幸せを願っていて
編集担当している日本画家・矢沢圭に心を寄せていく
圭の方も、いつもおどおどと怯えているようでいながら、人を惹きつけてやまない
そんな梨花に自然に思いを寄せていき、やがて二人は両想いの関係に
草花の絵ばかり描いていた圭が、梨花をモデルにした絵を描き
そして指輪とともにプロポーズをする
梨花も喜んで受け取る。圭の描いた絵を見ながらうっとりしていると
急にガクンと意識を失い、鏡の中から怪しげな女が登場
梨花を操るかのように絵筆を持たせて、絵を改ざんさせてしまう
めちゃくちゃなものにしてしまったのかと思いきや
それは梨花によく似た、別人の絵だった
意識を戻した梨花は、何が起こったのか理由が分からずに戸惑うばかり
気にしなくてもいいよ、とやさしく諭す圭をよそに
またもやおかしな行動をとってしまう梨花
部屋中を駆け回り、バッグの中身を全部バラまいたりやりたい放題
全て鏡の中の怪しげな女が操っていることなのだが
そのうちにその怪しげな女からハサミを手渡され、首を掻っ切ろうとしてしまう
寸前のところで圭が気付いて止めたからよかったものの
理由もわからず死のうとしていた自分が恐ろしくなり
そして、またあれがやってきたんだ
幸せになろうなんて思ってしまったから
またあれが壊しにやってきたのだと
このままでは圭まで不幸にしてしまうと思った梨花は
すべてを諦めたように、圭の前から姿を消し
仕事も辞めて、遠くベトナムの地へ
ほんの少しの間、羽を伸ばすつもりだった
しかし、泊まったホテルでも、夜中に不審者に狙われたりと
なかなか気が休まらない
おまけに慣れない土地で高熱は出すは
帰りのチケットは失くしてしまうは
チケットを買い求めに行く途中、バッグは取られるは
交通事故に遭うはで、もう散々
運よく命は助かったものの、怪我を負い心身共に疲弊しきっているところを
助けてもらった現地の母娘の優しさに触れ
少しずつ元気を取り戻していく梨花
竹細工を作っている母娘の手伝いをしながら
いっそのこと、姉妹のように、家族として
ここで生きていっても構わないよ、と云ってもらい
次第にこの母娘に心を許すように
ここで生きていくのも悪くないかもしれない、と思いながら
その頃日本では、なにも言わずに去ってしまった梨花のことが気がかりで
圭は、まずは梨花が勤めていた出版社に電話
理由も云わず突然辞められてしまったと聞かされ
彼女の履歴書から住所を聞き出し、部屋を訊ねてみるも誰もいない
不動産屋にまで問い合わせるも、個人情報だからとなかなか教えてもらえない
それでも必死に頼みこみ、そして梨花の生まれた町へと赴く
当時の梨花の家族を知っているであろう親類縁者、近隣住民たち
一軒一軒にあたってみるものの
誰も口を閉ざし、本当のことを語ろうとしない
そんな中たどり着いた一軒の産院で
梨花の出生の秘密を知らされる
元婦長の話によると、双子で生まれるはずだったのだが
先に生まれた方の赤ん坊が難産だったために
もうひとりが助からなかったとのこと
圭もベトナムへとやってきて、梨花の泊まっているホテルの別室に
圭からの手紙を受け取った梨花は、嬉しくてすぐにでも会いにいきたくなるも
手紙の内容に愕然としてしまう
そして思いだす、まだほんの小さな子供だったころ
大おばさんが母親に話していたことを
「この子のせいでもうひとりは助からなかった。いわば人殺しだっていうのにさ」と
自分は殺人者だった。本当は生きられるはずだった姉を殺してしまっていた。
生きていちゃいけなかったんだ
本来なら姉の代りに、自分が死んでいればよかった
幸せをつかみかけるたびに現れていた怪しい女は、実の姉であった
クライマックスで、梨花が作りあげた幻像ではなく
あの日死んだ本当の姉が出てきて あれはあんたのせいじゃなく
へその緒が首に巻き付いて起きた事故なんだと
だからもう苦しまないで、幸せになりなさい と言って終わるのだけども
きっとそのことは、母親も産院の元婦長も分かってたはずだよね
なんで梨花だけに重荷を背負わせた?
難産だったのはへその緒同士が絡みついて降りてこれなかったためで
それは産まれようとする子供たちにはどうすることもできないことじゃない
なのに、難産だったってことにして梨花を殺人者扱いにして
それで長いこと苦しめられてきた梨花の気持ちを
どうして誰も汲んでやることができなかったのだろう
劇中、梨花が両親にひどいことをされたという描写はなく
ただ、あの大叔母の言葉だけが呪いのように梨花の心に
無意識化の中ではあるものの、ずっと張り付いて苦しめ続けていた
母親は二人の誕生日やその他祝い事のたびに
二つ分のプレゼントを用意し、そのたびに涙ぐんでいたらしい
二つに分けられたジャスミン
ジャスミンとは漢字で茉莉花と書く
茉莉と梨花、二人でひとつの名前になるようにと
何故、もっと早くに本当は双子のはずだった
だけどもひとりは助からなかったということ
へその緒が巻き付いた事故だったんだと
云ってあげなかったのかと
子を失った悲しみは分からないでもないが、それにしても
口を噤むのはやさしさなんかじゃないよね
無言のうちに、お前が殺したと云っているのと同じだと思う
圭と出会えて本当によかった
梨花の心の傷が本テーマ(殺人者)だけども
圭も実は心に傷を負ったひとりかも、と思った
圭は主に草木や花の絵を描いているのだけど
最初観たときは、そういう画家なんだと思ってたけど
本当は人間にあまり興味がないか
あるいは疲れ切ってしまっていて
それで花や草木の絵を描いていたんじゃないかと
でも、圭は梨花をモデルにして絵を描く
圭もきっと、梨花と出会ったことで何かが変わったのかも
心に傷がひとつもない人間なんてきっといない
梨花たちの母親だって、双子の誕生を心の底から待ち望んでいたに違いなく
父親もまた同じだったことだろう
それだけに、失った子への悲しみ・失望はとても耐えがたいものだったのかもしれない
ただ、それは親自身が自分たちで受け止めていかなければいけない痛みであって
生まれた方の赤ん坊にはなんの関係もない話なのだが
圭役のコビヤマさん、
いい味出してて好きだな
本職は能楽師だとかで、声もめっちゃいい
あと夜会ではおなじみの香坂千晶さん、植野葉子さん
歌も演技もうまくて、ホントほれぼれする
クライマックスの梨花と幻想梨花が対決するところ
本当の姉が幻想梨花にあなたがあたしになれるのかと詰め寄るところ
梨花をやさしく抱きしめ、しょうがない子ね、といいながら
もういいんだよ、幸せになりなさい、と あえて突き放すところ
観るたび、号泣してしまう
実は夜会を劇場で初めて観たのがこの、vol.17の2/2で
同じ中島みゆきファンの友達と行ったんだけど
クライマックスのとこで号泣につぐ号泣で
こんなに泣けるものか!と思ったほどで
クライマックスの話でいうと、二人が争ってるところで
突如、反対側からみゆきが「り~か~ちゃ~ん」と出てきて
あれ、さっきまで争ってたあの人は誰?
どこで入れ替わったのって、すごいビックリしたのを思い出す
歌会vol.1でのめがね姿のみゆきさんも、とても可愛くって素敵です
73歳だなんてとても信じられない!
夜会もまたやってくれたら嬉しいな
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