ヤコブの西

ユダの酒のようにキリマンジャロをかいくぐる
ペテロの指示書にはここから離れろとある
誘惑の用水路のふちに立ち止まり鼻水をたらし
イエスの手形にオモダカの水面へと
洒落にならない落胆の色をしてこの界隈に隠れていろと
ジュウシマツの親子が卵の表面に
たらいのふちにこごえるアイゼンハワーの親書を示し
ニューヨークの水路のよごされたマニキュア的砂の城
菩提樹のケミストリーでハハコグサの白さがかわゆく
尾形光琳のにせものがこの街を歩いているから
ほとんどの傀儡政権は戸惑うほどに洒脱です
もしも本能的に嫌うのであれば、カモシカの
ひたいの駒が名人の手で運び出されるはずです
機知にとんだエトセトラの花火大会に
ボーイングの機内での盗まれた会話が
等しい貨幣の価値で航路から除外されるもの
なおもわたしの考えでは交渉人は低く飛ぶ
テラスの水は写真機の発明で照らされる
ニスで塗られた顔の一部に笑顔の仮面がはがれつつ
終身名誉顧問の席についた仮面が脱落という
ペルシャの煉瓦の道でさかんな工事に
君自身がすでにろくぼくの骨の影響で
セリーヌはみずからの背中に汗を流しつつ期待値とともに
野菜畑のオルガンにはしたなくてはしょる気配の
ジャムはすべての罪をわたしにかぶせてくるのである
積丹半島の船は漁場にすべりこみ
また昔の聖人のひそかなかまどにしずしずと言う
ろくでなしのスイートピーが前もって語る
今夜のテレビのさまざまな隠しごとを
ヤコブは今すぐ忘れようと言う
なじみの客は何人も席につき
もう乾杯をはじめているのであるから
イエスもあの隅の席でユダの話を聞いている
南海トラフの危険な兆候で今夜は満月が赤く見えるのだと
それから弟子たちのていたらくをののしるのである
酒を持ってこい、まだまだ飲むぞ
ヤコブの西は暗いのだ。