塔──戦慄するセレナーデ

 それは、<恐ろしい>を表象する塔。……あってもよいのだろうか? <恐ろしい>が。──あっても良いのだ、なぜなら世界は、いくつもの戦慄で満たされているのだから……いや、まさしく無数の。きらびやかなこの塔からは、人の魂のきらめきが落ちてくる。残酷なピアノ曲、セレナーデだ。そもそも人はなぜ安逸など求めるのか、眠りとは<死>ではないのか? 不穏で物憂げな戦慄で、この世界は満たされていく……そこに突然の<転調>である。神はいたのか? わからない、わからない、わからない……全てがあいまいにただ降り積もっていく。落下する物象、落下する時間。引き延ばされた自我が、この風景に世にも陰惨な彩りを加える──ま昼は一瞬にしてま夜中になる。<わたしたち>を圧する子鬼の群れ、<あれら>を、誰かは餓鬼と呼ばなかったか? 飢えた魂はこの塔の外面に沿って、第三次の虚空を、ただ垂直な宇宙へと駆け上っていく……その「影に満ちた光の変奏曲」ヴァリエーション、あ、い、し、て、い、た、わ……愛していたわ? <時間が、宇宙を、自我を> ここは34階、<全て>を懐かしさが支配している……

投稿者

宮城県

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