終わるなんて

ゼラチン質の春を歩く
足元に小さな動物園があって
躓いてしまった
お詫びに美しい声で鳴く動物に
名刺を差し出すと
動物は文房具をひとつくれた
使いやすそうな形状で
手によく馴染んだ
少し遠いところから係の人が
笑いながら手を振っている
雨が降り出したので
濡れないように
帽子を動物園に被せる
湿り気のある音を立てながら
景色が溶けて崩れていく
知らなかった
今日で春が終わるなんて

投稿者

コメント

  1. 美しい詩ですね。帽子を被せるのは動物にではなく、動物園に? まさに優しいたもつさんワールドだと思います。

  2. 足元の動物園に帽子を被せる件が最高に優しくて素敵だなあ。

  3. @たかづき しの
    たかづきしのさん、素敵な返詩ありがとうございます。春が終われば夏、順番に開いて、閉じて。

    私も返詩に返詩を。

    見送ればいい
    すべてのものに
    終わりがあるなら
    すべて見送ればいい

    手を振ればいい
    さよならを言えばいい
    泣いてもかまわない
    泣くのが嫌なら
    その嗚咽を飲み込んで
    笑って見送ればいい

    すべて見送ればいい
    いつか見送られるために
    たとえ見送られなくとも

  4. @大町綾音
    大町綾音さん、コメントありがとうございます。小さな動物園なので帽子でなんとか。雨の動物園が好きです。

  5. @あぶくも
    あぶくもさん、コメントありがとうございます。
    いっそのこと動物園に住みつく優しいおじさんになりたいです。

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