旅程──一つの残余である夕べ
見上げた時には空があったのだけれど、見下ろした時には視線の先には水たまりだけがあって、すでに空に何があったのかも忘れていた。
そんな日はわたしもかつての恋なんかを思い出せるようで、ただしそれもなんとか神様に結びつけて救いを求めるかのようで。
LOTTEとかのいちごチョコを食べたからきっと二人も満腹で、幸せな夢を見ようと河川敷に横になったんだと思う。
帰ってきたのは思い出だったのかわたしだったのか分からないまま、10キロもの重い荷物を持って歩道にたたずむ。家までまだまだ。
托鉢僧の偽物が恥知らずに街で集金しているものの、それを責め立てるわけにも行かないと思っているわたし……アイフルはもっと残酷だった。
帰り道に踏切はなくって、自動車のライトをわたしも点ければ、秒刻みで夕食を待っている両親のことを考える、冬の日。
もっと温かなもので大切なものをつつんでいれば良かった。そうすれば、こんな飢餓のような苦しみに囚われることもなかったろうに。
ウミネコのいつか聞いた声が頭の中響いた。切なさの糸だけでつながったそれは、きっと死んだ母がこの夕べに降りたという徴だった。
わたしはとうに泣けない女になっていたけれど、このときばかりは嗚咽しながら夜を待とうという気になっていたのだった。やはり心の旅。
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