城──漸近的な世界線の

 城……それは、カフカの「城」ではなくて、P・K・ディックの「高い城の男」の「城」か、トムとジェリーの「魔女の城」。漸近的に批評が現実化する世界のなかにあって、「城」とは一つの眠りのかたちなのです。……「戦場」と、書くべきだったのかもしれない? 戦いという人の歴史のなかに、「城」は「かたち」としてあったのですが、今ではスコットランドの湖水地方にうち捨てられた無人の城のように、安らかに死を待たされている存在であるのです。「城」は。……そうでなければ改修されて、AirBNBでアメリカ人のバカな女子大生たちがサワギに訪れる、そうして朝までウィスキーとワインを飲んだくれて、時間は「血」ではなくてアルコールで埋葬されていくのです。……ここにもひたすらな「死」がありました。湖の畔(ほとり)の城は、今や油彩の揺れる風景画のなかにしかないのです。

投稿者

宮城県

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