ムルソーへ デトロイトからの手紙
お前に手紙を書く日が
来るとは思わなかったよ
ビーチじゃお気楽な連中が
海の反射で光害に晒されてる
太陽は今日も無表情のままで
誰が誰を殺そうが
お構いなしだ
お前に明け渡したナイフ
手入れをしないと錆ちゃうぜ
不条理ってのは
使わなければ
ただのインテリアだ
俺達で彫った
呪文を覚えているだろう?
それを唱えずに
太陽のまぶしさに黙ったのが
お前の選んだ答えだったんだな
反抗的沈黙か?
笑わせるな
なあムルソー
お前の沈黙は
潔さだったのか?
それともただ
世界に背を向けた
怯えの裏返しだったのか?
どうでもよかったのか?
光の下で黙り込んだお前に
影の中で叫び続けた俺が
何度も問いを投げたのに
そのたびに
青い空と同じ目をして
お前は沈黙を続けたっけ
そして
今朝見た夢の中で
お前がついに言ったんだ
太陽はまぶしかった
ただそれだけだ
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