月夜の幻影

ゆるゆると満ちてくる赤
だんだんせり上がってくるリズム
貝がらの渦のような目眩
たゆたう蝶がまき散らす
媚薬のきらめき

目をとじて
心臓 打つ音よりも早く
先端 行きついたら
突き刺して
ぷっくり膨らんだ
はりつめた月

とろとろと 闇にとけだす
月から滴る 秘密のお伽話
だれにも言わないと
うそぶく金星

真実のかけらは
つめたい紫水晶
ブラックホールの奥深く
ひっそり息づく
手さぐりしながら蠢く指先
虚しく宙をつかんでも
凛として黙りこむ
頑なな夜

明けの明星 小さく震わす
蒼いメロディ
ひとさし指 唇おさえても
こぼれ落ちる 瑠璃色の戯言
すべてを吐き出しほっそり笑う
ゆるんだ月

そしてまた素知らぬ顔をして夜が白む

投稿者

埼玉県

コメント

  1. とろとろと 闇にとけだす
    月から滴る 秘密のお伽話
    だれにも言わないと
    うそぶく金星

    ここから、読み手は、作者のお伽話に、惑わされ、酔わされてくのでしょう。いや、すでに前の連から、酔わされているのかもしれません。…月がゆるみ、夜が白むまで。

  2. 長谷川さん、ありがとうございます。
    深く読んで頂き、感謝します。

    詩の世界に惑わされ、酔っていただけたのなら、幸いです✨

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