小説が死んだ日

小説が死んだ日

かなりの速度で小説が死んだ
前方の巨大な少女に気づくことなく、破壊されたのである
むしろ後悔のために、ヒルムデントの香りで
詳細にその事実を記憶にとどめるのである
投げやりな言葉で、シンクイが食い破るので
ところどころでは〈いなづま〉が首に走るのである
その悶絶するトンボのような記憶の隙間にあらわれる
ハビタブルゾーンの空気中の酸素の密度に記入されて
小説が酸欠でカンフル剤を打たれている
口があわあわと〈ホトケノザ〉を唱えているのは
いわゆる少女の干された肉体のかげろうと言うもので
その組織体は無臭の大陸的時間にあふれている
操舵室で彼は死んでいた
やはり喉に詰め込まれた〈意志〉と言うかたぶつの力であろう
こんりんざい、こんちきちん、あんぽんたん、うりふたつ
その様式美によって、彼の死が青いのである
追突した瞬間に眼玉が座席にぶつかっている
その行為のあからさまな卑猥さで、ジブラルタルの平行する日の出へと
月はもうしばらくは、少女の背骨から離陸する
力なく、その神経系に、幻の
右大臣がさかんに交差する間隔を指示しているので
彼から持ち出された感覚の色がすり減るのであろうか
衝突する彼と少女と巨大なバッタである
頭から尻尾まで、女のようにじだんだを踏むのは
男のように回転するムササビです
それらの小説の死と言うものの正体がはるかな
金鹿の滅び去る瞬間への露台です
頭に手をやり
衝突がそこに。

投稿者

岡山県

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