かぐや姫持って行ったピーチパイ

月で喰らったピーチパイが
銀河系で最もスウィートだった
バターの香りが
ワームホールを満たして
火星の売人が言った
桃太郎には内緒っすか?

かぐや姫は笑わなかった
冷凍保存された欲望を
電子レンジしすぎた顔で
一体これがラブじゃなくて
何だっていうの?

木星の引力が
パイの下の皿を割って
俺たちは零重力のキッチンで
崩れた夢の断片を拾い集めた

とってもスウィートだった
ほっぺに貼った
バンソウコウの味まで
ぜんぶピーチで

お前はホントに可愛いなって
思わず口から出た

かぐや姫はちょっとだけ
微笑んだ気がしたけど
それは
月面の影だったのかもしれない

俺はピーチパイの箱に
名前を書いたマジックの匂いで
子供の頃の空腹を思い出してた

じゃあねと言った声が
音速を超えて遅れて届いた

銀河にひとつだけ残った
スプーンが旋回しながら
ゆっくり回っていた

投稿者

東京都

コメント

  1. ロマンチックですね!

  2. @花巻まりか
    時々、かわいい系が通り過ぎて行きます。

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