ヨミの太陽
ちらちらと降る
葉桜のこぼした初夏の陽光の下で
白いものを崇め奉る信仰の国で僕は神様
いつか人間になるの、と嬉しそうに笑う
ぶっ壊れたラジヲを直すことが出来る方が
よっぽど世界を愛しているんだと思う
けどビルが乱反射して数字が電光掲示板を流れてゆく
目の奥で踊る神もまたきっと僕らの似姿をしていて
白い、白い、白い、って皆が持て囃す
メラニン色素の異常じゃないんですか、って芸人が突っ込む
源泉と言えば金のことになって
税金と言えば泥棒のことになって
コンビニスイーツの試食会をやるから嫌い
王様の真似事をして僕に神託をさせるから嫌い
嗚呼
世界のてっぺんへ行こう
天使の梯子が幾つも降りて来る
その上にある本物の王様の墓場で”また”君に会うのよ
神様は水たまりに映る誰かの為に泣いたりしない
少なくとも毛引きをする鳥一羽救えない神様にその資格はない
そう言うと鳥は僕を哀れむんだ
お前を騙す歌ぐらい永遠に囀っててやれる、天国だか楽園だか知らないけど
僕は何度も鳥の名前を呼んで人間みたいだって誉めた
そのうち本当に天使になるんじゃないかって思っていた
僕の天使!やっていられない
まだ僕は神様の呪で雁字搦め
乏しい切れかけたネオン
名前すら持てない浮浪者が金の無心をしてくる道端で
空は別に高くもなんともなかった、星は星で、太陽は全て
手のひらの中にある希望という名の小銭
シャッターが下りた商店街をげらげら笑いながら帰る
この街ももう終わりだな
世界がゆっくりと滞留するのを感じる
死はある日突然訪れたりしない、霧雨のように降るんだ
明るい方へ向かってジャンプすれば次のステージへ行けるよ
その暗くてじめじめした出口の無さそうな下水路からね
ただ見えないだけなんだ、と仰け反って笑う
その上にまだ広がっている違う世界があるってことが面白くて
とうとう天使になったその人は
僕の作った服を着て言った
「君が死にたいと言うから世界は終わるんだよ、いつも同じことの繰り返しだ」
見上げた先にあるものが月の光だと朝靄の中で僕は太陽をさえ憎む
神様の真似をする神様、神格、柱、威厳、伝承、
いつか人間になるの、
その前はカエルになりたかったんだけど
僕はただ葉桜の下で
きらきらしたものが何なのか目を凝らしている
神様でも人間でもないなら何なのだろう
それを言葉にするのは詩人だけだって地球を見た宇宙飛行士が教える
踏切を渡ろうとする誰かの歌が聞こえる
今日の昼ごはんにカレーを作りたいって嬉しそうに、幸せそうに響く
夜の間にあったことを皆忘れてしまえるように編んだ物語の結び目を
解こうとする僕のいたずらに顔を顰めててよ
白い、白い、白い、黒い、黒い、黒い、
天使は天使だ、神様は神様だ、人間の姿形なんて仮初だって
天国に行かなくても分かるよ
地獄に行かなくても分かるよ
僕はもう神様じゃない
新興住宅地のアスファルトにチョークで世界を描いてるだけの依り代
自転車、電車、飛行機、船、自動車、
線路、線路、線路、線路、
どうして皆行き場所すら分からないんだ
分からない振りをするんだ
妖怪のようにハンバーガー食らいながらオスカー・ワイルドを思い出す
きっと現実じゃ仕方ねえやつだったんだろうなって
生まれる前に月に残してきた
たった一人の恋人を愛していたいだけだってなんで分からなかったんだろう
後悔かな
すぐに本物の夏がやって来る、真新しい夏が、僕が死んだあの日のまま
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