五月のためのレクイエム
春が過ぎて湿り気の風
花たちは夕暮れのかなしさにふるえる
ふかい水につけられて心地いいような
そんなかなしみがあるなんて知らなかった
白い断片がいくつも空をかたどって
地上には同じかたちの影
ふくらんでいく季節に
置きざられて死んでゆく
ありきたりの音楽だ
奏でられることもないくらい
ありきたりの音楽だ
陶酔がはじまり
かすれていく記憶が
ちいさな手足をうごかし
水面に出ようとしている
呼吸を忘れてしまえばいい
委ねてしまえばいい
いくつもの泡になって溶けていく
くりかえし
最後の輪郭が
かたちをなくす前の
深い深い青
風になれなかった雲たちに
捧げたい
五月のためのレクイエムは
遠すぎた境界に投げかける時雨
コメント
この詩の 全体を通して、大切な悲しみがつらぬいている感じを受けました。大切です♪☆^^
すこし気になったのが、この詩の最後の「時雨」。秋の末から冬の初めごろの雨だと思うんですが、広辞苑によれば、時雨とは 涙を流すことを意味する場合もあるとのこと。涙。そう思って読むと、また一際大切さが際立ちますね。
ちなみに、私は五月生れなので、この詩に愛着がわきます。^^
五月特有の鬱々した感覚をこんなにも繊細かつ美しく表現されることに感服しながら読む幸せというのも完全にアリですねー
@こしごえ
さん
そうか、時雨って晩秋の雨なんですね。勉強になりました!
@あぶくも
さん
アリ認定ありがとうございます(笑)