ネズミ男 11千秋楽で土俵下正座
ネズミ男は
両国国技館の隅っこで
正座していた
チケットは無い
でも魂は升席指定だ
警備員の制止を
軽く受け流しながら
呼出しの声が響くたび
自分の名前じゃないかと
キョロキョロする
寂しさを隠す仕草で
後ろのジジイの焼き鳥を
素早く半分食った
土俵入りの横綱に向かい
ネズミ男はそっとつぶやく
その化粧まわし
メルカリでいくらで売れる?
周囲の視線が殺気帯び
持ち込んだ
カリカリ梅の数珠で
土俵に念を送った
取組が始まると
一人土俵下で手を合わせ
勝者が決まるたびに
誰よりも深くお辞儀をする
礼に始まり礼に終わる
これが武士道精神だと言いながら
カメラに映らない角度で
ピースサインを送るネズミ男
千秋楽結びの一番が終わると
塩を撒く力士の横で
オノレの悔しさを撒いた
誰にも聞こえない声で
陛下はいらっしゃらないのか、、
最後に土俵の俵にそっと触れて
この世界も結界だな
とつぶやいた
陛下にお渡ししたかった
俺の覚悟!
帰り道
両国駅のホームで
電車を待ちながら
みんなに聞こえる様に言った
俺は正座じゃなく
覚悟してたんだ
脳内カプセル部屋の中で
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