小母さん、走る

僕ずっと考えてたんだ
君が何故独身なのか

その履歴書で
唯一分からないところだった

独身という言い方は間違ってるかな
独り身だ

誰かを待ってた？
そうとしか思えないんだ

僕は何も待ったりしない
馬は走るために生きてるからね

生きられないなんてことは
この世界にいる以上は有り得ないだろ？

何を待ってるんだろう
それが僕に見えないこと

でも別に見てやる必要なんてないし
読む理由なんてもっと無い

だからこれは独り言
他愛ない世間話

月に行きたかったのかい？
地球に花を植えたかったのかい？

僕は走るために生まれた
だから誰か良い騎手を探せって言われた

けどね
本当は僕が一番よく知ってるんだ

自分が駄馬だってこと
ただ肉になるのを待ってるだけだってこと

騙してでも乗せろって言われた
肉になりたくないなら乗せろって脅された

でも乗れば分かるさ、駿馬じゃない、
だから乗せないんだ

僕を馬扱いしたすべての人間に
そして駄馬だと嗤ったすべての人間に

人間であることを誇ってるのさ
それが君に頷かない理由

君は誰を待ってたつもりなの
きっとこの先にその人がいるよ

嗚呼
カラスだって僕にいたずらする

分かってるんだ
ただ伝えるのが難しいだけで

だからもう行きなよ
世界中に馬はいる

竜でもバイクでも自動車でも一輪車でも
なんでも君を乗せてってくれるさ

その結果がどうであろうと
幸せになれるよ