ネズミ男16 アガルタの扉を蹴る
ネズミ男は
穴を掘っていたわけじゃない
落ちたんだ
しかもスマホを見ながら
地下12000メートルの
プラズマが渦巻く空間
そこにアガルタの門があった
ノックは無用だ
スニーカーのまま扉を蹴った
眩しすぎる暗闇の中
地底人たちは
光を避けて生きていた
見えるって事は
信じすぎるって事だ
四つ目の長老が言った
ネズミ男はポケットから
カリカリ梅を差し出す
言ってる意味はわからんが
これは交渉の基本だろ?
地底人たちは
目を細めて言った
それは太古の通貨
我々の詩の破片だ
プラズマが滴る壁に
ネズミ男の影が4重に映り
そのひとつが動いた
俺は今どれだ?
地底の図書館には
まだ書かれていない未来が並び
一冊手に取るたびに
記憶が過去を書き換えた
君はまだ生まれていない
司書のミミズが囁いた
ネズミ男は思い出した様に
やっぱり 俺は地上よりも
こっちのほうが
よっぽど生きてる気がするな
と呟いた
コメント