無窮動/ある初夏の昼前
世界の中心に立っていた。
田んぼは忙しない風に煽られ茶色く濁り、
草々はそれぞれが反り返って日輪を宿し、
ハルジオンはやれ白だ薄ピンクだのと存在を主張し、
カラスがカカァと鳴いたと思えば雉が精気盛んに喧しく叫び、
スギナが栄華を誇った上では燕が行き交い、
光は慈愛の温もりを与え、
やがて木々の擦れ合う音がカルテットを奏で、
鉄橋の電車は残響を引き摺って、
田んぼは相も変わらず波間を見せ、
乱反射する鏡はそれぞれの世界を写し、
温まった血液は体を周り、
視界は目眩く回り、
鼓動は加速し、
考えが駆け巡り、
正午が来る。
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