まちぼうけ

まちぼうけをしている
霊園のお墓のなかで
白白と明ける白骨のわたしは
時時
霊園の枯れた草陰から歩き出して
近くの空き地にいき
忘れ去られてペンキのはがれた木製のベンチで
しずしずとひなたぼっこをしている
来るはずのない薄墨色をした歴史の
ずっとむかしの一点に
咲いたみかんが実るのを
いまも待っているのです
しんと時の尽きるまで
いまも
あなたは
ふしめがちにほの暗くほほえむ
つみとったみかんの花を押し花にして
まちぼうけをしている
白白と明けた白骨のわたしを
のっぺりとしてじんわりとする 青空広く
おひさまがにっこり照らしているか
きらりきらりと 風は透けて
青い草は戦いでいるか
墓石はつめたく苔むして
ひんやりと息をしている
ひっそりとした風光を
記憶した初夏の
木洩れ日は影を孕み いまだ沈黙している

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コメント

  1. こしごえさんの「いのち」に基づく詩の中でも、明らかに「死」を意識的に書かれているのが、ちょっと衝撃というか、深いところにテーマを持ってきたなあと思いました。

  2. くりかえされる言葉はくりかえされるいとなみのようで、しんしんと積もります。
    どちらが骨なのかいったりきたりして、奥行きがひろがりました。

  3. トノモトさんへ はい。そうですねぇ。きついことを言うかもしれませんが。死は全ての存在にいずれ訪れる自然なことだと思います。全てが静止するまでですね。
    ある次元でこの詩は、私が居なくなった後の世界かも。
    しかし、トノモトさんがそう言って この詩の死などについてのことを汲んでくれたようで ありがたいです。ありがとうございます。

  4. たちばなさんへ この詩の死の空気のなかから、いとなみを感じてくれて うれしいです。
    更に、骨の存在をいったりきたりして、奥行きのある読み方をしてくれましたね。お墓のなかは、骨のわたしにとって狭かったようです。
    たちばなさんのようにこの詩の世界にひろがりを持たせてくれる読み方をしてくれて、作者としては ありがたいです。ありがとうございます。

  5. 骨であるのは案外呑気でいられるのかもしれない。まちぼうけでも骨ならばさほどいらいらせずにいられそうだ。
    そして白骨はおひさまがなかなか似合うものだなぁとなぜか思いました。好きな詩です。

  6. この不思議な作風も、何かすぐれた詩になってゆく可能性を思います。

  7. 王殺しさんへ ふふ。そうですねぇ。
    そうそう、王殺しさんの言う通りで、わたしは骨なんだから、というのがありますね。
    ちなみに、この詩の(話者ではなく)作者である私は、待つことを苦とは感じません。なぜなら、待っている間に物事を思ったり、身のまわりの景色や出来事などを見たり感じたりして たのしいからです。
    ふふ、白骨とおひさま。おひさまの光に白骨の白さが際立つ感じでしょうか。
    王殺しさんがこの作品を好きな詩と言ってくれて、ありがたいです。ありがとうございます。

  8. 剛さんへ ああ、ありがとうございます。剛さんが そう思ってくれて、ありがたいです。
    そうですねぇ、剛さんの言う 何かすぐれた詩になってゆく可能性 というのは、この詩に限らず、その作品が読者に読まれることによって、読者と作品の世界がさまざまに広がっていく可能性なんだろうと思います。
    そういう読者と作者の関係性というのは、豊かな関係ですてきですね。
    剛さんのおかげで このことに気付きました。剛さんへ感謝します。

  9. 静かな光景です。死を主題にされていますが、小さな温かさのようなものが漂っていて、そこに惹かれました。白骨でありわたしが、何だか切ない。

  10. すみません、訂正です。
    白骨でありわたしが ⇒ 白骨であるわたしが

  11. 長谷川さんへ ああ、惹かれてくれまして、ありがとうございます。
    そうですねぇ、霊園のお墓のなかで/白白と明ける白骨のわたし、というようにある次元で死をあらわしています。その死の空気感といっては何ですが、その死と関連した白骨などの様子が静かな光景を生んでいるのでしょうね。
    そのなかで、この詩の小さな温かさのようなものを感じてくれて ありがたいです。
    はい、そうですかねぇ。うーーん、やはり白骨であるわたしは、何だか切ない、ですかね。でも、ちょっと見方を変えれば、白骨のわたしって たのしいとも思いますけれど。ふふ。はい、でも、感じ方は人それぞれですもんね。どう感じたりするかは、その方次第ですね。うん。^^

  12. 生と死はひとつながりの物語ですものね。
    日向ぼっこする白骨と語り合えることばをいつかは身につけたい。そんな温かくてちょっと寂しい読後感でした。
    素敵。

  13. あまねさんへ そうそう そうですねぇ、言われてみれば、生と死はひとつながりの物語ですね。そう言ってくれてありがたいです。
    ふふ。はい、詩人のあまねさんならば、いつかきっと日向ぼっこする白骨と語り合えると思います。私もそうできるとすてき。^^
    この詩は架空の物語ですが、気を付けて見たり聞いたりすれば、実際のこの宇宙世界にも、ふしぎなことが あふれていますよね。
    うん、あまねさんが、温かくなってくれて、そして、寂しくなってくれて、貴重に思います。ありがとうございます。

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