ミルク
目を閉じて後ろから
役目を終えてやわらかくなったふくらみ
ミルクは血液からつくられるって
知ってた?
静寂に囁くように
窓の隙間 木犀も
姿なんて見たくはないけれど
どんな虫かな いくつもいるね
そう となりの梅に雉鳩がね
たまごを抱いているよ
あの子 すごいものを見つけたよって
かわいいね 鳩もあの子も
鳩はおなかのミルクで年中繁殖出来るんだってね
私たちなんて年中繁殖行動はするのに
お金のこととか考えちゃって大して産まないし
授かれないひとなんかもいてさ
かなしいね
烏にも猫にもおとなりさんにも
見つかりませんように
そう 内緒にしている
背中のくちびるから聴こえる
目隠ししようか
ううん
目を閉じればそれだけでドキドキするから
いいの
*
コメント
閨の秘め事のような艶っぽい雰囲気。
まぁ *
ぼくも負けないくらい、くっそエロい詩を書こうと思いました!
なんだろうな、このものすごいエロさは。直接的なことは何も言っていないのに(あえて抽出するなら「目隠し」くらいで)、繁殖行動の向こう側を描写しているように感じました。この的を得ない・何気ない会話のせいかな。ピロートークの勉強になりました!
にんげんの、さがとかなしみと、どきどきと(いのちの神秘のよろこびと)
ミルクは血液からつくられる、というのは知りませんでした。びっくりすごいです。
鳩さんもすごい。
ミルクのすごさが、この詩を通して こころに満たされます。
たかぼさん
ありがとうございます。閨って読めなかったのですけれど、シンメトリーで魅力的な漢字ですね。
王さん
* ってかたちがかわいくて。
アキラさん
エロい気持ちになかなか持っていけず、のらりくらりなひとときなんですが、その先にあるものを予感させて、くっそエロくなるのでしょうか(エロいは褒め言葉。嬉しい。にこにこ)
トノモトさん
エロいって言われるの嬉しいです⭐︎
プロローグ、自分が知る男の人たち相槌は打つけれど会話はそんなにしなくて、手ばかり動かしてむしろ会話を終わらせようとする。朝起きたところから始まっているって気づかないんだろうなって。こちらはコップに飲み物を注いだり釦を留めたりする手つきに熱くなっているのに。
というわけで虫の声も抱卵も内緒話も要素のひとつなのでなんとなくエロく感じるんだと思います。
名前が長いとやたら改行されるのも何とかならないかしら。恥ずかしいわ。
服部さん
いきものは命が脅かされると子孫を残したがる。鳩を見ていると敵に見つからなきゃようにほとんど動かず鳴かずにいるんです。きっとめちゃめちゃどきどきしてるだろうな!
こしごえさん
母乳飲ませていたとき「わたしってけものなんだな」としみじみしました。貧血になり髪は抜け歯はぼろぼろに。母は命懸けですね。
優しい口調の中に現れるリアリティの鋭い語が鮮烈な印象を放ちます。
独白のようでいて、誰かへの説得のようでもあるのは、現代の社会問題を孕んだからでしょうか。
やわらかい輪郭で囲まれながら、読み手に痕を付ける作品。
ゆーきさん
真摯にコメント書いてくださりありがとうございます。
コメントがかっこよくてポジティブにざわざわしました。(何者…只者ではありませんね…)
いまりさん
子どものころから生きる源が色だったので、きっと終わりまでひきずるのでしょう。
焦燥感や危機感が無くていい関係の、これまでとこれからのうちのほんのひととき。