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誰かが
冷蔵庫の奥で
俺を見ている
プラスチックのトレイ越しに
明かりがつくたび
名前のない光で
視姦される
りんごの皮が
少しずつ萎びていくのを
毎日誰かが
黙って見ている
お前のことだ
消費しようとしないで
保存するふりをする
未来の保留ボタン
賞味期限のシールの横には
何も書いてない
お前の感情は
いつまで
冷やしておく気だ?
俺の中には
まだ言ってないセリフがある
齧ってもいない叫びがある
冷気が薄れて
ファンが止まった瞬間
世界がまばたきする
その隙に
俺は「誰か」に言う
喰えよ
怖いなら怖いって言え
それとも
腐り落ちるのを
見届けてくれよ
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