仄白い浴室には
窓がないから
この後ろめたさには
どこにも逃げ場がない

許されるのなら
嘘をつくことを
おぼえたばかりの子どものように
無邪気にひとを傷つけてみたい

ただ
さびしかったから
という理由だけで

くだらない夢の終わりには
輝くことを知らない星が
空のひくいところから
ほころびるように壊れながら
雨のように
ゆっくりと降り注ぐ

それは
わたしが
ほんとうにかなしいときがきたら
はじめて流すために
大切にとっておいた
なみだ

投稿者

大阪府

コメント

  1. やっぱりこの感性は大覚さん特有のものだな。浴室、雨、なみだ、からの海という連想はシンプルなんだけど、じゃあこの詩のような情緒が出せるかというと、なかなかうまくいきそうにない。

  2. この詩から純粋な何かを感じます。
    悲しいんだけど、悲しいだけでは済まされない何か。
    その何かが、この詩の強度につながっているのだと思います。すてき♪☆^^

  3. 何とも大人なセクシーさを感じる詩です。涙腺ゆるくなりがちな年齢になった今、この詩の最後は何だか妙に刺さりました。
    読後にアンデルセンからの寺山修司もなぜかふと頭をよぎりました。「なみだは/にんげんのつくることのできる/一ばん小さな/海です」

  4. この特有のうしろめたさってあるよねー何処にも避けておけないのよねーまだまだ泣かないけどね

  5. @トノモトショウ さん
    ありがとうございます。
    久しぶりに詩を書いたら、書き方忘れてた(笑)。

  6. @こしごえ さん
    ありがとうございます。
    透明感、みたいなものは意識しました。

  7. @あぶくも さん
    ありがとうございます。
    書き上げて一読した時に、アンデルセン/寺山のそれが思い出されたので、このタイトルを置きました。

  8. @三明十種 さん
    ありがとうございます。
    「後ろめたさ」という言葉はかなり意図的に置いたので、そこに着目していただいてうれしいです。

  9. ガラスの繊維で築かれた構造物のように繊細なイメージです。
    きらきらと波の音、かなしい。

  10. @たちばなまこと さん
    ありがとうございます。
    そういう透明さみたいなものを、すこしでも感じていただけたなら何より◎

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