通勤の風景ーブラボーマンー
・夕方、人混みの通勤路、大声で歌をうたう人あり、歌の切れ目には強く拍手を繰り返し、様子を伺う人には笑顔で会釈。
・最初は驚いた、それでも毎夕の混み合う時の出来事なので慣れた。
・周囲の人も、目を合わせないように、距離を開けて歩くくらいで、日常の風景と化している。
・
・ともに改札口に向かう人たち、1分間/二百人くらいが彼の観客だ
・彼は私たち通行人から、音楽への共感を得られないのは何故か。
・TPOに反する、通勤路は歌い、拍手を受ける時間、場所、場合ではない。
・二十代半ばだろうか、音程、声量ともに、決して音痴ではない、声音は丁度テノールだ。
・曲が悪い可能性はどうか。
・聴いたことのないアニメ、女性ソングを情感たっぷりに歌い上げ、ポーズをとっている。
・
・ここで、例えばベルディのオペラ《リゴレット》の「女心の歌」を歌い上げればどうだろう。
・或いは、モーツァルトの歌劇《魔笛》の「なんと美しい絵姿」とか、最高の選曲ではないか。
・もはや通行人に会釈をして、拍手を求める、或いは自ら拍手する必要はない。
・満場の拍手と、ブラボーとの声援が起こるに違いない、素晴らしい日常ではないか。
・
・毎夕、通勤路で歌う、この名も知らぬ若者に、私はブラボーマンと名付けた。
コメント