りんごの中にまだ隠されてた
後悔は芯まで喰った
その先にあった
噛み砕かれずに残った
異常に固い
何か
それは種じゃなかった
小さな書きかけの
契約書だった
インクの代わりに
乾いた涙で書かれていた
この果実を喰らう者は
誰かの痛みをひとつ背負う事と
裏には走り書き
赦すな
けれど忘れるな
誰の字だ
俺のか?
種ではなかったけれど
確かに芽吹いていた
無意識の森で
誰にも見つからないように
誰かを見張るための
眼(まなこ)が
今さら吐き出せやしない
もう喉を通って
体内に巡っている
それでも選んだんだろ
と声が言った気がした
冷蔵庫の中
赤い灯が点滅している
もう誰もいないのに
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