カフェでもなくって

カフェでもない
カフェでもない
朝の寂しい空気の中をあなたと
庭をそっとたどる時、
あなたは、花と青菜を手に戻って来て

わたしはキッチンにいて、ただ
紅茶をわかすようなそんな時、
あなたは紅茶は嫌いだったから
わたしはただ水平線の奥を整えて、
ざっくばらんな感想を、あなたへ

今日の花は、花瓶にくらべて小さいな
だから、ガラスのコップに入れて、
テーブルのうえに何気に飾って、
もしくはリビングに。
あなたの手のそばに……そんな変形。

青菜のほうは、レタス。
ひとつ、ふたつ、
どちらも大きくて、テーブルの上
まるでバスケットのボールみたいで、
まるで上気した青い血の男の子みたい

フルーツ・ティーの香りが
ダイニングの薄暗い空間を満たしてく
カーテンはまだ開かれず、
あなたは椅子にすわって、
今朝は、何時に目覚めたの?

もう、いろんな音が大きすぎて、
ふたりで耳を塞いていたいね
そうすればこの部屋も海みたいに静寂
……あの世の果てまで、ニライカナイ
あはは。またあなた、冗談言ってる

その時間が、静かになって、
「今日の予定忘れちゃったよ」、と、
あなたが言う、そのおどけた笑み。
ふと、わたしは“お前“ではなかった、
そうだったのだと思い出して……

わたしはまだここにいる。
たしかにここにいる。
息づいている。
でも、今はまだ内緒ね? 朝焼けが
ふたりの間を決して引き裂けず染めて

……後悔したことなんてなかったよ?
後悔したことなんてなかった。
でも、あなたはとっても“イケズ“で……
朝の、昼間の、
光がだんだんにこの部屋の中も染めて

わたしは、またため息ひとつ
あなたは、また微笑みひとつ
ひとつとひとつとが静か重なり合って
急に開けてゆく世界……
ああ、娘たち……

お前たちが戻ってくる前には、
今日もわたしたちは、
わたしたちの幸福を
そっと確かめておかなくては、
いけないのだ……。

投稿者

宮城県

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