風成砂(Aeolian Sand )
サラサラサラと
ゆっくりと音も立てずに
降り積もる
一定の周期で天と地が逆転する時の狭間で
薄い硝子は膨張し収縮し割れて弾ける
風が吹いて解き放たれたように
砂は天空に舞い散る
霜月最後の満月が砂丘を照らし
干潮の海面が月への階段となって
さざ波のような風紋とひと連なりとなる
蓄積した時が浄化され振り返ると足跡はもうない
風の吹くまま
気の向くまま
足の赴くまま
生まれて初めて知るような
生まれる前から知っていたような
道しるべはいつもここにあった
ヒュッヒュッヒュッヒュッと
自分の足音だけを感じながら
聴こえていたのは音楽でした
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英訳版『Aeolian Sand 』
Swish, swish, swish— falling slow, like whispered wish.
In the pause where sky and earth reverse,
glass expands, contracts—then bursts.
The wind begins—released and wide—
and sand ascends into the sky.
The final full moon of November glows,
and lights the dunes in silver rows.
The ebbing sea reveals a stair—
the Staircase to the Moon laid bare.
The time amassed is cleansed and gone—
you turn, and find your footprints gone.
Where the wind blows, let me stray.
Where the heart leans, walk that way.
As if I knew it newly born,
yet knew it long before the dawn.
The sign was here —always clear and near.
Hush. Hush. Hush. Hush.
My steps alone.
The sound I heard
was music’s own.
コメント
この詩は私の敬愛する音楽家のアンサンブル・コンサートのために書き下ろされた曲とのコラボ作品です。曲の冒頭で朗読されることを想定した詩となります。
擬音部は譜面の拍子(前半3/4, 後半4/4拍子)とシンクロしています。
同音楽家との過去のコラボ作品はコチラ。
『黒龍』https://poet.jp/photo/3885/
今回は要請に対応すべく英訳詩を付けました。
英訳部分はAIのサポートを受け、言い回しに単語や韻など、納得いくアウトプットになるまで何度もプロンプトを調整し対話を繰り返して完成しました。
ヒュッヒュッヒュッヒュッと
自分の足音だけを感じながら
聴こえていたのは音楽でした
最終連、ふしぎな音楽ですね。
ヒュッヒュッヒュッヒュッと、というのは、砂を踏みしめながら歩く音ですかね?
自分の足音だけ、のだけ、というのもミソだと思う。音楽でした、という過去形なのも、余韻をふくらませます♪☆^^
生まれて初めて知るような
生まれる前から知っていたような
道しるべはいつもここにあった
そして、この連に 安心感を覚えます。道しるべはいつもここにあるんですね。極自然な安心感が、ここにはあります。
風成砂、という言葉を初めて目にしました。
この詩の前半で、その様子が、うまく描写されていますね。繊細で豊かな場が、この詩で表されています。
あぶくもさんが敬愛する音楽家とのコラボ作品とのこと。この詩は、そういう意味においても、とてもすてきな作品ですね♪☆^^
確かにこれはリーディングするといい感じにリズムにのれて気持ちがいいです。
2連目から3連目の昂ってゆくところなど好みすぎます。
(コラボ予定の音源をどこかで聴くことは出来ますか?)
@こしごえ
さん、コメントありがとうございます。
また深く読んでくださったようで感激です。
ヒュッヒュッヒュッヒュッについては私の中には明らかなイメージがあるのですが、読んでいただく方に自由にとってもらえる余地を残しています。おっしゃる鳴き砂みたいな音もひとつですね。「風成砂」実は私も曲名と言うかお題を頂いて初めて知った言葉でした。人と交わりながら詩を生み出すこともまた何か特別な刺激のある体験です。
@たちばなまこと
さん、コメントありがとうございます。
2連目から3連目のあたり、気に入ってもらえて嬉しいです。音源はねぇ、ないんですよー。多分、曲の全貌すらまだ出来てない可能性ありますね。11月にコンサートする予定(未定)と聞いて、お題と三部構成の曲の副題みたいなものと各部の作曲中の頭出しサンプル音源みたいなものだけをもらって、落語の三題噺かよって突っ込みながら詩を先行して完成させたものになります。
外国版宮沢賢治みたいですか?
@花巻まりか
さん、コメントありがとうございます。
だけど、想像の斜め上を行ってて、「ごめんなさい、ちょっと何言ってるかわからない(サンドウィッチマンの富澤 たけし風)」ですー。とまあ、冗談はさておき、真面目にどういうことか教えてほしいなー。プリーズ。
英語訳を同時に載せるというのはご苦労されたとおっしゃっていますが確かにそうでしょうね。英語には擬音語が少ないのでその表現に興味を持ちました。Hushというのは擬音語で使われるかどうか知りませんが、静かにするとか静かさとかの意味があるようで、この詩の表現したいことと合っているように思いました。
@たかぼ
さん、コメントありがとうございます。
swishもhushも私の英語力では自力では出せなかったですね。gptサマサマです。外国語も含めて、言葉の世界はやっぱり奥深いものがあって面白いです。
@あぶくも
さん、私も終わりがいいなって思いました。独特なオノマトペ?で、宮沢賢治みたいだーって。浅いですね、すいません。
@花巻まりか
さん、とんでもないです。あー、そういうことでしたか!私自身が宮沢賢治とは随分距離あるなーと思って迷子になってましたね。オノマトペですね。ヒュッって何の音やねん、ですね。足音なのか音楽なのか…私もよくわかりませんー♪
霜月最後の満月…。11月の終わりですね。夏至が近い今頃読むと、その涼やかさ、寒さが、心地よい。言葉のリズムが良く、音楽と共に朗読するのに適した作品だと思います。たしかに、宮沢賢治っぽいですね。
@長谷川 忍
さん、コメントありがとうございます。
西オーストラリアのブルームという場所で見られる「月への階段」をモチーフにしつつ、コンサートが11月とのことで霜月となりました。私にとってオノマトペと言えば中原中也が浮かびますが、宮沢賢治も勉強しなきゃですね…