月の調べ

小高い丘の上

何も知らない僕たちは

空を見上げていた

今夜は月と星たちの演奏会

雲の幕が上がり、星たちが彼を見つめる

彼が手を上げると

星たちはいっせいに音を奏でだす

その音色は幾重にも

織りなし

重なり

集まり

やがて大気圏で弾け、降り注ぐ

何も知らない僕たちは

ただ静かにその音色を浴びていた

ある子は涙し、ある子は微笑み、

ある子は身震いし、ある子は呆然と

その音色は教えてくれた

何も知らない僕たちに

小さな惑星の小さな僕たちに

小さな小さな幸福を、愛情を、悲しみを、

怒りを

何も知らない僕たちは

小さな小さな桶にその知の欠片を集めて

ゆっくりと飲み干した

欠片は

小さな僕たちの小さな身体の真ん中で

ゆっくりと溶け出し

やがて枝の先まで流れてゆく

僕たちは知ってゆく

本のページをめくるように

土に芽が生え、木になるように

ゆっくりと、

ゆっくりと、知ってゆく

ゆっくりと、変わってゆく

彼らの演奏が終わり

再び雲の幕が降りた

あたりが再び夜の静けさに包まれると

僕たちはゆっくりと目を閉じ

静かに眠りについた

投稿者

福岡県

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