地衣類が見た夢ver1.1

わたしは幸せになれると
信じていた

この冬が終わって
あたたかな春が来ると

夜は必ず明けるのだと

でも現実は違った
わたしはすべての期待を棄てた

空をあおげば上皮層の熱圏に
気味が悪いほど鮮やかなオーロラだ

じめじめした下皮層の
厚ぼったい花弁のような乱層雲が白い

なかなか乾かない髪を梳きながら
それらを眺め口ずさむ唄は悲しげ

あれに見えるは藻類層で狂う流星群か

明滅するそれらは
兆し

上下もないバイオフィルムのなか
光のとどく膜の外には
宇宙と呼んでいる地上があるらしい

地の底の底でわたし
地衣類が見た夢

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