地衣類が見た夢

わたしは幸せになれると
信じていた

この冬が終わって
あたたかな春が来ると

夜は必ず明けるのだと

空をあおげば上皮層の熱圏に
気味が悪いほど鮮やかなオーロラ

じめじめした下皮層に
厚ぼったい花弁のような乱層雲
なかなか乾かない髪を梳きながら
唄声は悲しい

あれに見えるは藻類層で狂う流星群

明滅それは
兆し

ここは天国ではない地上
光のとどくフイルムの膜の外に
宇宙と呼んでいる地上がある

地の底の底で
地衣類が見た夢

投稿者

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。