ストーン

あちらこちらで人々はまともなふりばかりだ
それにボケもなければオチもなくてつまらん
ただ見えているのは横たわる惰性があるだけ
自意識は自慰式にもてあまして放出するだけ
草木や虫が知らぬ間に一斉にしゃべりだすぜ
じっとしててもベッドに体がめり込んでくぜ
しっかりとシーツをつかんで踏ん張ってろよ
地球の自転の遠心力に振り落とされちまうぜ
昆虫博士にでもなった気分か知らんけどなあ
ぬかるんだ地面にどっかとしゃがみ込んでさ
フンコロガシが糞を転がしてるのをあんたは
どれだけの時間眺めてたのか知ってるのかい
小さな沢飛び越えるだけのことに高揚してさ
もう心臓飛び出るほどドキドキしちゃってさ
体が宙に浮いた瞬間どんな気持ちがしたのさ
連続シャッター切ったみたいな視界が良くて
ゲップを我慢してみたり出してみたりしてさ
キャンドルの灯りだけがやけに眩しい暗闇の
煙い部屋で延々叙事詩を奏でていたんだよな
あのシタールの男とタブラの男は何者だった
明日の朝は前正覚山に登ろうかなんて口約束
その日出会った押し強めな優男の気前の良さ
反故にして翌朝長距離バスで出発してしまう
悪かったな10時間ほど揺られてから言うなよ
夜中のバスにポリ公が押しかけてきた時には
カバンを開けろとしか言われていないのにさ
これはミュージックテイプだと言ってみたり
これはトゥースペイストだと自ら説明してさ
そんな奴はどう考えても狼狽えてて怪しいぜ
たくさんのチャック付きポケットが表に裏に
ついてる鞄で何とか命拾いしてんじゃねえよ
それにしても自然豊かなところで良かったな
場所も心の状態もしっかり自分で選ぶんだぜ
でなきゃほんとにもう戻って来れなくなるぜ
冷たい水で顔でも洗ってのんびり待ってろよ
そうこうしてる内に状況が飲み込めてくるさ
その腕に自信があっても決して運転はするな
その容姿に自信があっても決して鏡は見るな
被っていたハットは決してベッドに置くなよ
年老いたように悩み惑って疲れて果てた20代
つまらん10年を過ごしたと思っていたら30代
抗鬱薬に抗不安薬と抗精神病薬をブレンドか
他に抗うものがあるだろうと自嘲するも40代
不惑なんて嘘だろう実際は口噤むだけのこと
みんなして死ぬまで惑って生きるんだろうよ
そのまともなふりは何だか卑怯でつまらんよ
まあまともじゃないふりはもっとつまらんが
惑いの森から一筋の光を見出さんことを願う
そのうち新たな衰えがやってきてそこからは
転がるように人生を駆け降りて行こうぜなあ
知ってるだろ転がる石には苔は生えないのさ
知ってるだろ転がる石には苔は生えないのさ

投稿者

千葉県

コメント

  1. ぽえ会のボブ・ディランこと、あぶくもさんに拍手を。きっちり言葉を揃える理性と、チョイ悪な口調の奔放さ。不惑ではなく不埒な40代でありたい。

  2. アバンギャルドなナチュラルさ、のような受け入れてみたい世界観でした。

  3. なるほどこれはモノリスですね。少し細長いモノリス。
    これに触れることによって猿はナニカに変化するのです。さて僕は何に変化しようか。

  4. トノモトショウさん、フォークギターからエレキギターに持ちかえたライブで観客のブーイングに対して「You, liar」と臆せず言い放つディランが大好きです。
    不埒な40代、良いっすね。
    ショウさん見習って長四角のやつ書いてみました(^^)/

  5. たちまこさん、アヴァンギャルドとか前衛とか(って同じか)実験とか、そんな言葉だけで白ごはん三杯行けるクチです。
    この世界はリアルで受け入れてしまうとストーンしちゃうので御用心。

  6. 王殺しさん、モノリス‼️ウケました‼️
    良い触媒になれていたら冥利に尽きます。
    猿はトム少佐になるかスターマンになるか地球に落ちてきた男になるのでしょうかね。
    詩人の仕事はそこかしこにモノリスをブッ立てていくことかも知れないなと思わせてもらいました。

  7. ボブ・ディランですか。なるほど、たしかに彼を彷彿させます。きっちり言葉を揃えた定型的な詩を私も書きますが、上手くはまると、ちょっと快感がありますよね!

  8. 長谷川さん、そう言えば、ディランには「雨の日の女」というストーンにまつわる物議を醸した曲もありますね。
    先日のアクロスティックもそうですが、定型的な縛りを設けた詩作はそれはそれで作るのも読むのも好きです。

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