COLORs
○白めいた
色があった
君の白めいた指やその先
外海が言葉で満ちる頃
僕らは改札口で
無くしてしまった水棲生物の
欠片を探していた
でも本当は
最初からそんなものはなくて
僕ら自身が誰かの
記憶だったのかもしれない
終わりに向かうものと
始まりに向かうものが
交差するところ
冷たい列車が到着して
その後、にわか雨が降った
○桜
思い出してほしい
君に僕のことを
僕に君のことを
花びらと生きた春を
花びらと終えた春を
何故その色を選んだのだろう
桜のように呼吸をして
桜のように笑って
○風
君は風になった
比喩などではなく
専門の学校に入り
必要な課程をすべて履修して
風になった
どうして風になりたいのか
聞いたことがある
わからない、と君は答えた
どうして風になったのか
聞いたことがある
答えはもう言葉ではなかった
君が僕のノートを捲る
書いたものをすべて消していく
君の横顔を描いていたはずなのに
僕の輪郭も思いも
一緒にさらって行った
君は透明になって
他の風と見分けることさえ
できなくなった
○COLORs
初めに色があった
二つ並んだ形だった
陽だまりの跡と
体温の質感
掌のようなところで
それはさっきまで
確かに色づいていた
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