帰路にて

二時間の練習中、水は口にしない
家に帰れば冷たいビールが待っている
今日は練習がきつい、道着が汗でビショビショに
着替え、挨拶を済ませて自転車に乗る

亡者の如く喉が渇いている
猛暑、止まらぬ汗、蝉すら鳴くのを止めている
公園の噴水の水は枯れ
剥き出しのコンクリートが陽に曝されている
喉の詰まりは、呼吸すら苦しい
限界に近づいている

古びた自動販売機を見つけた
ランプが灯っている
慌ててポケットから小銭を取り出す
地面に落ちる小銭
震える手で投入する
麦茶を押す、ガラっと取り出し口に落ちる音

震える手でキャップを開けて
一気に飲む
喉が渇き過ぎた
飲んでいる、それでも液体が喉を通る感覚がない
瞬く間に空に

再び、震える手で小銭を投入する
水を押す、ガラっ
落ち着いて、キャップを回す
一気に飲む
喉の渇きは変わらず、しかし舌が液体を自覚する
目には、うっすらと涙が浮かぶ
瞬く間に空に

自販機の下に座り込む
水分が、じっくりと身体に行き渡る感覚

地面に落ちた小銭を拾う
三本目は炭酸飲料、コーラにする
ガラっと
落ち着いてキャップを回す、プシュッ
冷たい泡と炭酸のシュワ、甘さが心に染み渡る
一気に飲む

うっすらと残る涙を拭き、自転車にまたがる
帰ろう、家へ
冷たいビールが待っている

投稿者

大阪府

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。