止め方のわからない命 〜バッテリー残量0の記憶〜
バッテリー残量0
それでも画面は微かに光る
何故まだ動いてる?
誰かが設定した覚えのない
オートリブートの人生
記憶は切れている
消し忘れたアプリの裏で
夢の断片がフリーズしている
これは俺という名の
起動不能な肉体だ
誰が何のために
この命を生かしている?
電源を抜いたはずの場所で
通知の幻聴がまた鳴る
あなたの人生に未読があります
眠るたび
俺は修理屋の夢を見る
治せないコード
書き換えられたログ
アクセス不能の感情ファイル
この命は
ユーザー同意のない
アップデートを繰り返している
止め方はもう忘れた
指が震えて
オフボタンを長押しできない
俺はきっと
自分じゃ終われない
誰かのタイマーで生かされてる
誰かの罠か
あるいは奇跡
絶望の中で
再起動されたのは
音楽も詩も
壊れた充電器で
無理やり差し込むように
今日も書く
記録という名の
延命措置
バッテリーは0
だけど
俺はまだ
終了されていない
この記憶は
置き去りにして行こう
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