チャーハン

アパートの玄関に母が立っていた
一人暮らし社会人2年目の時だ
来ちゃったよ と笑う母
母は多くを語らない
だだ
ユニットバスのお風呂を掃除したり
洗濯物を丁寧に畳んでいる
金曜の夜日付が変わる頃
飲み会もあってくたくたで
帰宅した
玄関を開けたとたん
おかえりなさいと駆け寄ってくる母
なんか、食べるか?
母の目は丸くて少女のようだ
飲み会で遅くなる
食べて帰るとメールしたはずなのに

母の手料理で好きだったグラタンを
リクエストしたら
がっかりさせてしまう気がした
チャーハン食べたいから作って
わかった
母はエプロンをつけてネギを刻み始める
背中をぼんやり眺めた
おいしいか?と何度も尋ねる母
うん
私が食べ終わるまで
ずっとにこにこして見ていた
翌朝
そろそろ帰るわ と
母は帰っていった

投稿者

東京都

コメント

  1. お母さんの存在が ありがたいですね。そういうことを思わせる力が、この詩にはあります。
    タイトルの チャーハン も効いています。

  2. @こしごえ さん
    嬉しいです。ありがたいですね。母は忘れ物を取りに来たのかな。たぶん、こういうことってずっと覚えているんですよね。

  3. グラタンからチャーハンになる件がタイトルになっているところが母娘のその時のリアルな関係性を表象していて素晴らしいなと思います。こういうことは個人史としてしっかり詩で残しておくのが良いですよね。

  4. @あぶくも さん
    母が好きな自分の姿というものがあって、また、なりたくなったのかなと思いました。振り幅が狭くて安心するけど、狐で狸で兎もいいですね。ふふふ。

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