Birdcage

君が初めて同じ部屋に入って来た時のこと
覚えてる
私には全然気付かなかった

二度目に声を聞いた時の事
野球の話をしてたな
私には全然気付かなかった

三度目の記憶は四度目以降の記憶と大差ないんだけど
植物を枯らす管理職なんて
私には全然気付かなかった

君が居て当たり前になってきた頃
ぼんやりとポストと階段を行ったり来たり
私には全然気付かなかった

君が居てくれればいいのに
そう思いながら苺ミルクを啜る
私には全然気付かなかった

君と歩くタイミングが合うようになってきた頃
それは別に誰にとっても何も不思議ではなくなって
私には全然気付かなかった

君が私に初めて目を向けた時
君が私に初めて声を発した時
私には全然気付かなかった

ずいぶんちいさないきもんになったものだ
ずいぶんおおきなひとをすきになったもんだ
地球は星だと(あるいはあなたが太陽なのです!)気が付いた私は

鳥の真似をしてぴよぴよと歌うし
猫の真似をしてにゃあと鳴くけど
私には全然気付かなかった

何処まで行っても君と繋がる世界線なんてないのだよと
守護天使は笑う
私には全然気付かなかった

右手の甲に見覚えのない血管が走っているのを
ふと視界の端に捉えた、それだけ
私には全然気付かなかった

別にいいんだ
これ以上なんていつだって望んでないのに
私には全然気付かなかった

つまり気付かれた後のことを考えたくないのか
知られた後のことを責任持ちたくないのか
私には全然気付かなかった

愛されてることも、慈しんでいることも
花を手折りたくないのと同じ
私には全然気付かなかった

このままでいいんだ、とひよどりが虫を食いながら話しかけてくる
ピーナッツ要りませんか?って聞きたいんだけど
私には全然気付かなかった

私には
全然
気付かなかった

このままでいいんだ、
ピーナッツは要らない
君が居てくれれば

投稿者

神奈川県

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