歯ブラシ
初めて会ったばかりの男と焼き鳥を食べている
なんでも頼みなよと男は言う
男は二時間後私をレイプする予定だ
この焼き鳥屋うまいよなって笑う
少年のように
ハツやかしらは鶏のどこなのかとか
今まで就いた仕事
思いつくままに質問した
男はさほど面倒な素振りも見せず
答えてくれる
男の性器は特殊らしい
刑務所に入っていた時
歯ブラシの柄を削って入れたのだそう
どんな犯罪を犯したのかは
濁していた
男が私をレイプする時間が迫る
私が二番目に安いパネルを押す
身体を綺麗にする
裸だ
ところどころ盛り上がっている歪な性器
みるみる硬くなる
硬くなってしまったら
身体を開くしかない
出し入れされ
男の物語が一つ終わる
男は私が指定した場所まで送ってくれた
運転ができるの すごいね
口数は少なかった
笑うところがもう一度見たいと思った
二度レイプされることはない
嬉しいわけはないだろう
悲しいわけもないだろう
どこが泣いているのか
AIにはわからないだろう
私にだってわからないのだ
コメント
客観的に見て「同意」だと思える事柄であっても当人が「不同意」だと思う内側の複雑さを描かれた詩のように思えました。この詩に出てくる女性のような人に現代の何人かの男たちが葬られて来たのかも知れないなと、どちらに与するでもなく乾いた感じの炎上しそうな脳内妄想が広がりました(^^)
「レイプ」という言葉の強さに比べて、主人公の感情の薄さの矛盾が、この詩の肝かなー。で、タイトルそこから取るのか!と衝撃を受けました。
@あぶくも さん
怖いですよね。当人が同意だと見せなければならないことある…。だけど、悪気はないんですよね。悪気があるかどうか。それは何かを判断する時にとても重要に感じます。悪気がないなら、良し!ダメか。
@トノモトショウ さん
タイトルつけるの苦手で思い浮かばないと詩の中から抜き取ることにしています。便所の落書きの後、タイトルをつけることで作品になるのか?タイトルとはなにか。役割は。タイトル無題で良くないか?次の議論はそれにしたいですね。
オレはほぼタイトル先行で、そこからイメージ膨らませるので、無題の詩ってのが想像できません。もし「無題」ってタイトルにするなら、それが活きる詩の内容にするかもしれません。例えば俳句や短歌にはタイトルつけないですもんね。でも内容が俳句や短歌で、そこにタイトルがついてたら詩だと思うかな。
@トノモトショウ さん
ほうほう。なるほど…。自分はできないのですごいなと思いました。タイトルから入る人はかなり少なそうですね。他の人は生まれた赤ちゃんの顔を見て名前をつける感じに近いのかなと今思いました。
なるほどレイプという言葉が詩になるときはこういう形をとるのかと感心させられました。
@たかぼ さん
嬉しいです。性愛って、やはり言葉にならないですよね?言葉にならなくて、でも一人便所の中で、知ってる限りの言葉で書いてみた。なにか、それぞれの一歩のようなものがあるように思いました。