ネズミ女とネズミ男 アナザーストーリー
ネズミ女の目の前には砂浜が広がっていた
そして海
懐かしい匂いがして
ずっと辿り着きたかった場所のような気がしてくる
リュックサックには99個のカリカリ梅の種
つまり真理99個
海風に乗って
数枚の原稿用紙が足元に舞い落ちた
なになに
1章ネズミ男とホッキョクグマとの格闘、凍傷
2章ガンジス川で沐浴、下痢、ネズミ男赤痢疑惑…
どこかで見た話だとネズミ女は思う
ー昨日の夢だ!
これは…一昨日見た夢!
点と点が繋がり愛の形を描き始める
ネズミ男?もしかしてこのへんにいるの!?
ネズミ女は辺りを見渡す
流木に腰掛けて海を眺めるネズミ男の背中を捕える
ネズミ男!!!
ネズミ女は力の限り叫ぶ
ネズミ男は振り返る
その時音は音を無くし世界はたった二人のために存在する
お互いの黒目の真ん中にネズミ男とネズミ女がいる
肝心な時にネズミ女は言葉に詰まる
なにから伝えたらいいだろう カリカリ梅の種集めてきたよ こんなに ずっと探していたんだよ?100こ集めたら会える気がしたから ほらこれ全部真理 カリカリ梅一つゲットのために何回も死にそうになって 大変だったんだから! ねえ一緒にいろんなことしたい ドーパミンの海で溺れたい 私頭悪くて でも誰かに聞いて欲しくて詩書いてた 私寂しいんだよね 同じように感じてほしい 一緒に切なくなったり心が静かになったりしてほしいの ねえ ネズミ男ー
ネズミ女が一歩を踏み出そうとしたその時
すばやく背を向け尻を出すネズミ男
一瞬混乱する
愛の形を描き始めた線は失速し始める
中折れするチンコのように
ネズミ女は小さなため息をつく
わかったよ の合図
言葉を交わさなくても二人はとっくに理解しあえた
私とおんなじだね
臆病なネズミ男
ネズミ女はその震える尻にそっとたんぽぽを挟んだ
バイバイ
ネズミ男は最後まで顔を上げることはなかった
ネズミ女がひとりぼっちの巣に戻り五本目のストロングゼロにとりかかる頃
ネズミ男はどこか遠くで二回目のオナニーにとりかかる
脳内カプセルで偽ネズミ女を犯す
目を閉じてしこしこ上書きし続ける
なんやねん
バカネズミ男!
一番可愛く見えるワンピースを脱ぎ捨て
いつ出会ってもいいようにと新調した天使のブラを壁に投げつける
するとどこからかカリカリ梅の種が一つ転がってきた
カリカリ梅の種…100個目の…しかもまだ乾いてない…
ネズミ男ネズミ男ネズミ男ー
もう二度と会えないのだとわかった
ネズミ女は100個目の真理を抱きしめわんわん泣いた
ベランダにはカリカリ梅の種が一つ干してある
お日様に当たって風に揺られて
乾いたら枕の下に入れて眠ろう
きっと面白い夢が見られるから
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