午睡

太陽に向かって葉を伸ばす
雨に打たれて根を伸ばす
それだけで生きているということらしい

やがては冥府まで届く
天国にまでも辿り着くのかな
目も耳もないのに

いつか、いつか、と呟きながら
成層圏すら越えるんだろうか
そのために死なないのだろうか

不思議なのはきっと
この醜い心と体の方で
太陽と大地と森というのはきっといつも正しい

木にも寿命はあるけど
森にはないような気がする
水には命がないのかもしれない

星の王子様に出てきたバオバブみたいに
この星の芯を砕いて
すべてを破壊して次の星を夢見る

鈍くて短くて儚いのは
人間の方だな
と思った

何も見えないから
何も聞こえないから
何も言わないから

せめて時間の概念を作って
彼らに追い付こうと
空を飛んでみたり車を走らせてみたり

でも結局
永遠には手が届かない
人間の命は寄せる波、すぐに返る

ちっぽけでいいんだよ
火星に思いを馳せる必要なんてない
盆栽みたいな植木に水をやりながら思う

人間だけが夢を見るのかな
痛みに悲鳴を上げるのかな
死ぬことを思い描くのかな

植え替えてやんなきゃな
水を換えてやんなきゃな
枯れた枝を払わなきゃな

それはたぶん
私が支配者だからじゃなく
管理者だからでもなく

植木たちが人間よりもデカいから
地動説を唱えた天文学者みたいに
私は膝を抱える

星の遠さを教えて
光の歌をうたって
風の夢を見させて

こっそりと、静かに
生きているかどうかも分からないぐらいの
永い時間のお勉強

投稿者

神奈川県

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