道案内

ああ、また道を間違えた。
正しい道は分からないのに、
間違えた事だけは分かるんだ。
ここは左じゃなかった
でも多分右でもなかった
いよいよ分からなくなっていく

真っ直ぐ行くだけで良かったはずなのに
どこかで好奇心に負けてしまって
路地裏の仄暗さに心惹かれて
狭い方を選んでしまったから
少し歩けば戻るつもりだった
でもいつの間にかもう辺りは暗くて
道しるべも何処にも見当たらなくって
ただ複雑な分かれ道だけが広がっていた

そこの角まで進んでいって
目に入った景色にまた
間違えてしまった事を悟って
一度来た道なのかすら分からなくなって
たぶんもう
最初の道に戻れることは無いんだと知って
人を探して、でもそこには自分しか居なくて

あの時は綺麗に見えたビール箱も
あの時は輝いていた古アパートも
今となってしまっては
廃退の象徴にしか見えなくなった
正しい道へは辿り着けないのに
誤った事だけ分かる残酷さに
でも止まることもできない虚しさに

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