真夜中のヴィジョン
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目と唇のひとから
告げられたとおりの5つのおまじないの言葉を囁いて
目隠しを解いて 外気に触れると
生き残った思いの残り火は 地下鉄に飛び乗ったあのひととともに 広場の夜へと走り去って もう探しようがない
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(光の僕を追いかけていた途上で 闇の僕が 僕を追いかけていることに気づく)
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あのひとの広場はどんな広場だろう
きっと観覧車やキャラメルがある
青い指輪や鏡ばかりの部屋もある
オリオン座のドレスが釣り下がっているのが見える
ビードロの絨毯の上で僕は休息を取るに違いない
黄昏時に迷子になれば きっと 帰れない
どうやってここへ来たのか
きっと 思い出すことを
いつしか 僕は拒むだろう
目と唇のひとの広場。
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(光の僕を見失って 闇の僕から逃走することへと僕は費やされる)
(でも、むしろ僕は 光の僕に追い求められることを願う)
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目と唇のひと
名前のない愛しあう誰かと誰かたちは 名づけあってから
次の日には もうその名前はシュレッダーで裁断される
暗がりの中だと 通りすがるみんなの顔が綺麗だね だなんて
そんな呟きの誰かも 午前一時の空爆 か この世界のディスクドライブから消殺されて
永遠に 見えなくなったよ
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(疾走しているうちに)
(僕は光の僕でも闇の僕でもなく あなたを いつか見つける)
(その時 僕はようやく光の者でも闇の者でもなく あなたを知るひとになるのだろうか)
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地下鉄の通路の闇にシェルターをイメージして
誰かと誰かの愛情 一人ずつ守りながら
僕は 際限もなく沸き起こる羅列の錯乱に告げられた5つのおまじないの言葉 すり切らして
目と唇のひとのこと を 考えてる
真夜中のヴィジョン
あの目と唇の像を 紡ぐ
真夜中のヴィジョン
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コメント
次々と絶賛が起こっては消滅していく感じが癖になります。
たちまこさん、ありがとう。スザンヌ・ヴェガっていうひとのNight vision という曲をいつか思い出したら聴いてください。それにインスパイアされた詩なのです。