マスカレードな日々

マスク無しで生まれてきたいよ
次はマスク無しで生まれてきたい
マスク無しでキスがしたいよ
マスク越しのキスはもううんざりだよ

俺の好きなあのこはマスクを被っていた
俺のことを好きだと言ってマスクを被せた
マスク越しに触れ合いながら彼女が言う
あぁもぅマスク無しじゃいられないわって震えながらね

リスクをマスクしてタスクにアスクして
青信号になったら飛び出そう!なんて
セーフティなセックス
それじゃ満足できないのが
わからないかい

宵闇を歩いていると
まるでマンチェスターな気分さ
美しく浮かぶ唇のゆがみに
涙のこぼれる音がせつなく
唇を見たのは
あれが最後だった

リマスターされたささやきが
両耳から響いて
メタセコイヤみたいなあぶくと口からでる
あのこのマスクをはがしたい
10ホールのハーモニカ
マスクをとって吹きたいのさ
本当を伝えたい

無影灯に照らされる
手拍子が俺を奮い立たせる
燃えるような酒と手拍子だ
ミル・マスカラスは言う
さああの高みに立て
飛ぶように生きるんだ

墜落するように目が覚める
霊安室に横たわる
あのこのマスクを下げる
子供が欲しいよ
二人の子供が
冷たすぎるキスをする
なあ朝食には
スズランの花をちりばめた
サラダを食べよう
マスクを捨てて
二人でマスクを捨てて

また飛ぶように生きるんだ

投稿者

岩手県

コメント

  1. コロナ禍という状況を上手く絡めたラヴ・ファンタジーですね。マスクが比喩になる時代が来るとは、数年前まで予想もしませんでした。洒脱で、ラストが切ない。

  2. もはやマスク=コロナ禍を表すパブリック・イメージになってしまった中で、より深奥に潜り込んでいく詩人としてのタフネスを見ました。皮一枚隔てた我々には、もはやナマの気持ち良いコミュニケーションなんてできないのかもしれない。「スカイ・ハイ」も失恋の歌だしね。

  3. 長谷川さん
    洒脱なラブファンタジーとはうれしい。最後はBGMとしてスカイハイとともに尾崎紀世彦のまた会う日までも流しています。

    トノモトさん
    ああやっぱよく知ってるね。
    You’ve blown it all sky high
    By telling me a lie
    だもんね。僕も子供心になんで「嘘」って入ってるんだろって思った記憶があるな(lieが嘘ってことは知っていた)。あとで失恋の歌と知ってカラス兄弟のイメージまで変わったよ。
    やっぱ障害物はないほうがいいよね。

  4. おもしろい!と思いながら読んでいましたが、最終連で一気に悲しくくるしくなりました。
    スズラン食べて次は飛ぶように生きるからいいのかしら。

  5. たちまこさん
    スズランの花はかわいくておいしいですよね、絶対食べちゃだめだけどね。特に花は。
    活けていた水を犬猫に飲ませてもいけません。

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