耳の畑

お前の痛みは正しい
おかしくて反転してるのは
この世界の方だ
痛みを和らげるなら
なんでもしろ
芸術と内臓が繋がってるなんて
医者に言っても
笑われるのがオチで
仲間に喋ったら
一番最初に生まれた
ニワトリの卵を探せって
言われちまった
余計わからなくなって
向日葵の種を鳥に食わせたら
そいつが糞を撒き散らし
立派な向日葵畑が出来ちゃった
耳がゴッホから独立した
あの畑だよ

風が吹くたび
見知らぬ誰かの名前をささやく
死んだ画家たちの筆跡を舐める音
遠くでガラスを割る音
まだ生まれてない赤ん坊の泣き声
全部風の中で蠢いて
夜になると
耳は花びらを閉じて
月の鼓動を聞き取る
ゴッホから独立したあの畑は
絵具の匂いで満ちて
俺の鼓膜まで侵食してくる

翌朝
向日葵はぜんぶこっちを向いて
お前の痛みはまだ生きてるぞって
口を動かした
トンボが輪を描いて