あなんすぃえいしょん
ベランダの窓を小さなこぶしで
こんにちは
男の子がふたり
手を繋いで 兄弟みたいに
きみたちのことはよく知っているよ
逢いにきてくれたのでしょう
舞い踊る金箔に虹が乱反射するひとすじの光の中
ただ歯を見せて嬉しそうに
向かいの窓から下界を覗くと
石がごろごろと残る土の上に
新しい家々が新しい町として生まれてゆくのが見渡せた
顔を上げれば水平線に
多角形のオパールが幾つものレイヤーを揺らして
歩き出せば 世界は拓けて
拡がっていることを語りかけていた
大きい方の男の子とクリスタルを転がした日も
母音でおはなししながらよちよちと歩いて膝に辿り着いた日も
あなたは
目尻をうんと下げて笑っていたし
詩を書いたし
相変わらず消え入りそうだった
私は声も涙も出さずに泣くんだ
あなたの母も小さい方の男の子に逢いたがっていて
ぼくは薬のせいでもう子どもは望めないんだ
ごめんねって
冷たい雨の夜も深まる秋への日々も
終わりをなぞるからまだ少し怖い
黒い海を嘆いて動けなくなったとき
あなたの言葉に呼ばれた人と
破けて血だらけの胸を撫で合いながら
怖くて寂しくて待ちわびて泣いているだろう
小さい方の男の子を迎えに
大きい方の男の子はあなたのように思慮深く
生きることに惑う様が美しい時を過ごしている
小さい方の男の子は待ち続けたからきっと
ひとりになるのが怖くていつもくっついている
みんなが賑やかににこにこと過ごしていることが好きで
おどけるところを見せるのが好き
時々男の子ふたりで寄り添っていたりして
あの日ベランダで乱反射した光が奇跡のように浮かび上がるよ
あなたと繋いだ男の子
あなたが繋いだ男の子
ふたりの男の子に逢わせてくれてありがとう
さようならを言ったはずなのに
今は内緒で涙を零しながら
あなたもベランダから逢いにきてくれれば
いいのにって
*
コメント
僕にはやさしい気持ちも心も感じながらもやはりくるしくなります。どうも自分勝手に人の詩を投射するくせがあります。
あたたかく感じた秋の雨も冷えてくるととても寒い。よく乾かして暖かくして風邪をなさらないように。
王さん
響いたみたいでそこは素直に嬉しいです。
くるしいから書くのです。昔から救われたい時には書いていました。これもそうなんですけれど、気まずい時ににやけてしまうように、暗色にクリーム色のシルクのサテンをかけようとしています。
Yatukaさん
面白いって書いてくださって嬉しいです!ありがとうございます。
このサイトで、詩ややりとりから感じとってお人柄を想像するのが好きです。
そして、少し泣いてくださったのですね。
三連目の、
私は声も涙も出さずに泣くんだ
最終連目の、
今は内緒で涙を零しながら
この、ふたつの涙を想うと、私もちょっと泣けてくる。
「あなた」は、思慮深い方だったのですね。
哀しさや苦しみも確かに見えるけれど、オレはやはり命が繋がっていくことの幸福を感じたかな。自分も父親になって、人生の大半が子供のことになった。子供が笑い、育っていくだけで、もう何も要らないと思える。オレが死んでも子供は生きていく、残っていく、繋がっていく。それはやっぱり親としての最大の幸福だと思う。
長谷川さん
やさしい涙をありがとうございます。
思慮深いひとでしたね。
あと、皆さんのことをよく見て感じていました。
トノモトさん
子どもはくるしいほどに無条件に慕ってくれて、人は本来こんなにも幸福だって教えてくれますよね。親になれたことラッキーだなぁと思います。
(トノモトさんから頂いたコメントで泣いてしまいました!)
どうコメントしたら良いか、わからなかったのですが(*´-`)
ひりひりするような、ポカポカするような、両極端の感情が行き来しました
いくつも映像が浮かびました(^ ^)
神紫月さん
読んでくださるだけでも嬉しいのにコメントまでくださって嬉しいのさらに上をいきました。ありがとうございます。
触れて書いてくださったご感情、ご感想、あたたかいです。
ナツコさん
ありがとうございます。
書いているときの背景まで察する鋭さ、流石です☆
まだまだ長生きしたいので「いつか」が遠く、でも楽しみです。