プラスチック
悲しみより澄んだ夜明けの
集配室から発出した文書が
まだ届かない、と
先方から連絡があった
わたしはベンチで
草のための列車を待ちながら
遅れがちの頁をめくり
しおり紐の形を触っている
一羽のカラスが
光るものを大事そうに咥えて
ホームの端で跳ねている
わたしが子供の頃、宝物にしていた
綺麗なプラスチックの破片は
やがて意味をなくして
ある日、ゴミ箱に収まった
思い出すことも
忘れていくことも
同じ重さなのに
他には何もなかったのに
小さな波音をたてて
列車が到着する
そのシートやつり革の
冷たい感触を思ったとき
父が養子であることを知った
コメント
カラスって、光るものが好きらしいですね。
この詩を拝読して、私が幼少の頃、2センチ位のプラスチックの花みたいな おもちゃを大事にしてたのを、村の同級生に取られて草やぶの中に捨てられたのを思い出しました。(あ、いじめられていたワケではありませんが。その時は、意地悪をされた)
他にも、それに似た、喪失感をおぼえた経験を思い出しました。
どうすることも出来ない、現実ってありますよね。でも、その現実とどう向き合うかは、自分次第なんだろうとも、この詩を拝読して思いました。
たもつさん、すてきな詩を書いてくれて、ありがとうさま♪☆