日雷(ひがみなり)

雷はいつもぼくたちのうしろにいる
振り向くのを禁じられた
ぼくたちのうしろにいる

崖からは海がよく見えた
水平線といくつかの島々
少女は立ちつくしていた

夢との境目
開けてはならない扉
その前で

灰色と藍色が混ざり
あたらしい雷がつくられる
けして触れられない距離

崩れかけの輪郭
歌をやめた少女は
崖の下を覗いて繰り返しふるえる

やわらかな雨の予兆がきて
いくつかの過程があって
雷はいつもぼくたちの後ろにいる

投稿者

東京都

コメント

  1. 柔なら感じた切迫した感じ。痛みと秘匿と不安の中で揺れ動く、繊細で素敵です。

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