角膜損傷ブルース
瞬きの数だけ
稲妻が走る
角膜が
夜を切り裂くたび
長い暗闇に沈んでいく
理想ばかりを
噛み砕いていた
どれも時間がかかりすぎて
吐き出すのは
ため息ばかり
瞬きを恐れて
カーテンも閉めた
携帯はOFF
氷嚢で
痛みを騙す
そのうち麻痺するなんて
誰かが言ってたけど
ウソだ
痛みはちゃんと
回数分やってくる
一発一発
俺を削っていく
目を閉じれば痛み
開けば恐怖
じゃあ
どうやって眠る?
リスクを承知で
酒で誤魔化す賭けには
出れない
台所の引き出しから
スプーンを取り出す
目玉を
えぐれば
楽になれるんじゃないか
そんな衝動と
戦ってた
崇高な理想論なんか
一晩で砕け散る
個人の痛みの前で
哲学は役に立たない
取り出さなかった
俺の目玉が
ギョロっと笑った気がした
夜に鳴かない鳥が
屋根の上から
俺を監視している
そして
朝の光が刺す
うっかり
瞬きをしてしまう
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